症例紹介

犬の歯石、歯周病の症状と原因、治療について|獣医師が解説

歯科 症例紹介

犬の歯石、歯周病の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
犬の歯の健康は、全身の健康にも大きく関わる重要な要素です。特に歯石や歯周病は、放置すると痛みだけでなく、心臓病や腎臓病などの全身疾患の原因にもなります。今回は、犬の歯石や歯周病の症状・原因・治療方法について、獣医師の視点から詳しく解説します。

犬の歯石とは?

● 歯石とは?
歯石は、歯垢(プラーク)が唾液の中のミネラルと結びついて硬くなったものです。歯垢は数日で歯石に変わるため、放置すると簡単には取れなくなります。
● 犬の歯石の特徴
•    黄色や茶色の硬い付着物が歯の表面に見られる
•    歯茎との境目に多く付着する
•    放置すると歯周病を引き起こす
歯石自体は大きな害をもたらしませんが、表面がザラザラしているため細菌の温床となり、歯周病の原因になります。

犬の歯周病とは?

● 歯周病とは?
歯周病とは、歯を支える歯周組織(歯肉・歯根膜・歯槽骨)が炎症を起こす病気です。進行すると歯が抜けるだけでなく、細菌が血液を通じて全身に広がることもあります。
● 歯周病の症状
初期の段階では気づきにくいですが、以下の症状が見られる場合は要注意です。
〈初期症状〉
口臭が強くなる
歯茎が赤く腫れる
軽い歯茎からの出血
〈中期症状〉
歯石が増える
よだれが増える
歯茎が後退して歯が長く見える
〈重症化すると〉
歯がぐらつく、抜ける
鼻水やくしゃみ(口と鼻の間に穴が開く「口鼻瘻」)
顔の腫れ(細菌感染による膿瘍)
食欲低下や痛みで食べづらそうにする

犬の歯石・歯周病の原因

歯石や歯周病の主な原因は以下の通りです。
① 口腔ケア不足
犬は自分で歯を磨けないため、定期的な歯磨きをしないと歯垢が溜まり、歯石へと変化します。
② 歯並びや犬種の問題
短頭種(フレンチブルドッグ、パグなど)や小型犬(チワワ、トイプードルなど)は歯が密集して生えているため、歯垢が溜まりやすく、歯周病になりやすいです。また、経験的にミニチュアダックスフンドは歯石がつきやすい子が多い印象です。
③ 食生活の影響
柔らかい食事ばかり食べていると、歯垢が付きやすくなります。ドライフードのみで飼育することが予防に役立ちます。
④ 加齢
年齢を重ねると、歯茎が弱くなり細菌感染のリスクが上がるため、シニア犬ほど歯周病になりやすい傾向があります。

犬の歯石・歯周病の治療方法

● 歯石の治療
一度付いてしまった歯石は、自然には取れません。 獣医師による処置が必要になります。
【治療方法】
・スケーリング(歯石除去)
超音波スケーラーを使って歯石を取り除きます。通常、全身麻酔が必要です。
・ポリッシング(研磨)
スケーリング後に歯の表面を磨くことで、歯垢が付きにくくなるようにします。
● 歯周病の治療
歯周病が進行している場合は、以下の治療が行われます。
・抗生物質の投与(感染がある場合)
・抜歯(重度の場合、歯を抜くことが最善策になることも)
・歯周ポケットの洗浄(細菌を除去し炎症を抑える)

犬の歯石・歯周病の予防方法

① 歯磨きを習慣化する
最も効果的な予防方法は歯磨きです。犬用の歯ブラシを使い、1日1回を目標に行いましょう。歯磨きのコツは、最初はガーゼで優しく歯を拭くことから始めることです。詳しくは病院スタッフへお尋ねください。
② デンタルケア製品を活用する
歯磨きが難しい場合は、噛んで遊べる、食べられるタイプでない玩具を補助的に使うのもおすすめです。
③ 獣医師の定期検診を受ける
年に1~2回は歯のチェックを受け、必要に応じて歯石除去を検討しましょう。

まとめ

・犬の歯石や歯周病は放置すると重篤な病気の原因になるため、日々のケアが大切です。
・特に歯磨きは最も効果的な予防方法! できるだけ習慣化しましょう。
・ドライフードには歯石を予防する効果がありますので、ドライフードの総合栄養食のみで飼育することが、歯石、歯周病予防にはおすすめです。
・歯石が付いてしまったら、動物病院で除去するのが安全です。
愛犬の健康を守るために、ぜひ今日から口腔ケアを検討してゆきましょう。


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【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

この子は重度の歯石の付着による歯周炎で麻酔下で歯石除去を行なっています。ここまで重度に歯石が付いていると抜歯による対応が必要になります。


超音波スケーラーで歯石を粉砕除去後、歯の表面をツルツルにするために研磨剤を使ったラバーポリッシングを行いました。
また、歯根部が障害し、ぐらついている歯は抜歯によって対応しています。
犬も猫も近年は総合栄養食での飼育が一般的になっているため、肉切りの意味合いしか持たない犬猫の歯は、仮に抜歯してもほとんどの場合生活に支障が出ません。むしろ、ぐらついている歯が残っていると感染の原因となるため、抜本的治療法として抜歯を選択することの方が犬猫の歯周病の合併症を減少させることになります。この子も歯石除去と抜歯の処置後、口の痛みと口臭がほとんどなくなり、ご機嫌な生活を送っています。