症例紹介

犬の歯根膿瘍の症状と原因、治療について|獣医師が解説

歯科 症例紹介

犬の歯根膿瘍の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
わんちゃんが調子を崩すと、飼い主さんとしてとても心配になりますよね。今回は、わんちゃんの歯根膿瘍の症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。

【犬の歯根膿瘍とは?】

歯根膿瘍は、犬の歯の内部に感染が進行し、膿がたまる状態を指します。この疾患は犬の歯の健康に悪影響を及ぼし、場合によっては全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。

【犬の歯根膿瘍の症状】

犬の歯根膿瘍の症状は以下のように多岐にわたりますが、すべての症状が一度に現れるわけではありません。
1.    歯痛: 犬は歯痛を訴えることはできませんが、食べ物を噛む際に痛みを感じるため、食事が減少することがあります。
2.    食欲不振: 犬が歯の痛みのために食事を避けることがあります。
3.    唾液の増加: 歯根膿瘍による炎症があるため、犬の唾液が増えることがあります。
4.    顔の腫れ: 歯根膿瘍が進行すると、顔に腫れが現れることがあります。進行すると破けて膿が出てくることがあります。
5.    歯石と口臭:歯石の沈着を同時に認めることが多く、口臭が強くなります。

【犬の歯根膿瘍の原因】

歯根膿瘍の主な原因は、歯の感染です。これは、歯垢や歯石が歯の表面に蓄積し、細菌が侵入し感染を引き起こすことがあります。また、歯が折れたり欠けたりすることも感染のリスクを高めます。不適切な食事内容や体質、デンタルケア不良などに起因する歯周病が関連することもあります。

【犬の歯根膿瘍の治療】

歯根膿瘍の治療にはいくつかの方法があります。症状や犬の全体的な健康状態に応じて、獣医師が適切な治療法を選択します。一般的な治療法には以下が含まれます。
1.    歯の抜歯: 歯根膿瘍が進行している場合、感染した歯を抜歯することが必要となることがあります。
2.    抗生物質: 獣医師は感染を管理するために抗生物質を処方することがあります。
3.    歯のクリーニング: 全身麻酔下で歯の歯垢や歯石を取り除くことで、感染の再発を防ぐことができます。

獣医師の診断と指示に従い、適切な治療を行うことが犬の歯根膿瘍を効果的に管理する鍵です。早期の発見と治療は犬の快適さと健康にとって非常に重要です。犬の歯根膿瘍は放置せず、獣医師の診察を受けることをお勧めします。適切な治療により、犬の口内の健康を維持し、痛みや不快感を軽減することができます。
歯の健康を守るためには定期的な歯磨きやデンタルケアが必要です。また不適切な食生活を改めることも必要です。歯の問題は放置すると心臓病やD I C(播種性血管内凝固症候群)など命に関わる事態に発展しかねません。当院では、動物の状況や飼い主様のニーズに応じた歯の処置やデンタルケアの情報を提供することができます。飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、愛犬の歯についてちょっと気になることがありましたら、お気軽にご連絡ください。


次郎丸動物病院へのご予約・お問い合わせ

【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

上の奥歯の歯根膿瘍によって、目の近くが腫れ上がって破れてしまい、皮膚から膿が出てきたわんちゃんの事例です。


歯石の付着度は中程度ですが、歯周ポケットが深く、周囲の歯肉が侵され、ぐずぐずになっていました。この様になると歯根膿瘍が疑われ、抜歯での治療が必要になります。


案の定、抜歯した歯は歯の中の歯髄まで変色していました。抜歯した跡は皮膚の穴まで通じており、上の奥歯の歯根膿瘍が原因と推察されました。


この子は抜歯後は順調に回復し、皮膚の膿が出てくる穴も治り、今は快適に生活しています。犬の歯、特に臼歯は人間と違い食べ物をすりつぶす機能を果たしていないため、抜歯しても普段の生活には支障をきたさないことが多いです。この子に関しては、むしろ悪い歯を抜歯することで、今まで感じた痛みがなくなったためか、食欲も増進し、穏やかになりました。歯根膿瘍は定期的かつ適切な歯のケアを行うことで予防できます。当院での歯のケアについて、詳しくはこちらからご覧ください。