ミニチュアダックスフンドが罹患しやすい病気の症状と原因、治療について｜獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
ミニチュアダックスフンドは、その可愛らしい見た目と愛情深い性格から、多くの家庭で愛されている犬種です。しかし、体型的特徴や遺伝的背景から、注意すべき病気がいくつか存在します。早期に気づき、適切に対応することで、健康寿命は大きく変わります。
この記事では、ミニチュアダックスが特に気をつけたい病気について、症状・原因・治療の観点から解説します。

椎間板ヘルニア

ミニチュアダックスでもっとも多い疾患として知られているのが椎間板ヘルニアです。
歩き方がぎこちなくなる、背中を丸めて痛がる、抱いた時に鳴く、後ろ足がふらつく、階段を嫌がるといった症状がみられます。重症では後肢麻痺や排尿困難が起こります。
原因は、ダックスが軟骨異栄養犬種であり、生まれつき椎間板が変性しやすい体質を持つことです。ジャンプや滑りやすい床が発症リスクになります。
治療は症状に応じ、内科から外科手術まで幅広く、特に麻痺がある場合は早期手術が予後に直結します。

進行性網膜萎縮症（PRA）

遺伝性の眼疾患で、視細胞が徐々に萎縮することで視力が低下していきます。
初期は薄暗い場所で物にぶつかる、夜間の散歩で歩きづらそうにするなどの症状が見られます。進行すると昼間の視力も落ち、最終的に失明することがあります。
原因は遺伝子異常で、治療法は確立されていません。ただし進行速度を緩やかにする目的でサプリメントが用いられることがあります。生活環境の工夫が生活の質向上に重要です。
繁殖犬の遺伝子検査が普及すれば予防可能な疾患でもあります。

関節リウマチ（免疫介在性関節炎）

免疫異常により自分の関節を攻撃してしまう病気です。
関節が腫れる、歩き始めが痛そう、触れると嫌がる、徐々に関節が変形していくなどの症状が見られます。慢性化すると運動能力が低下します。
治療は免疫抑制剤、消炎鎮痛剤、リハビリ療法を組み合わせて行います。適切な体重管理と関節に無理のない生活環境作りも重要です。

様々な皮膚疾患

アレルギー性皮膚炎・外耳道炎

足や体を頻繁に舐める、掻く、耳が赤くなる、脱毛があるなどの症状が見られることがあります。特に季節性の悪化や慢性化しやすい傾向があります。
原因は食物アレルギーや環境アレルゲン（花粉・ハウスダスト）などさまざまです。
治療はアレルギー用フード、薬、定期的な薬用シャンプー、生活環境改善が中心となり、症状や原因に合わせた長期的な管理が必要です。

カラーダイリューション脱毛症

ブルーやシルバー系など希少カラーのミニチュアダックスに多い遺伝性皮膚疾患です。
若い頃から毛質の悪化や脱毛がみられ、皮膚が黒ずんだり二次感染を起こすことがあります。かゆみは軽度〜中等度の場合があります。
治療は根治ではなく管理が中心で、薬用シャンプー、皮膚保湿、抗菌治療、栄養バランス改善、抗酸化療法などを継続することが大切です。

パターン脱毛症

ブラックタンやチョコタンの毛色の子でみられ、耳の縁、胸、腹部など、特定の場所に左右対称の脱毛が生じます。炎症やかゆみを伴わず、見た目以外の問題がないことが特徴です。
原因は遺伝性でホルモン受容体のバランス異常が関係していると考えられています。
治療は必須ではありませんが、サプリメントなどで改善する場合があります。

僧帽弁閉鎖不全症（心臓病）

小型犬に多い心臓の病気で、ミニチュアダックスも発症しやすい傾向があります。
初期は症状が目立ちませんが、進行すると運動を嫌がる、咳をする、疲れやすくなる、呼吸が早くなるなどの症状が出てきます。
原因は弁の変性によるもので、加齢とともに進行することが多いです。
治療は心臓薬の投与、利尿剤、血圧管理などが中心となります。早期診断・治療介入により寿命と生活の質が大きく変わるため、シニア期には定期的な聴診・心エコー検査が非常に重要です。

副腎皮質機能亢進症（クッシング症候群）

ホルモンの異常により体内のコルチゾールが過剰に分泌される病気です。
水をたくさん飲む、尿量が増える、お腹がぽっこり膨れる、毛が薄くなる、皮膚が弱くなる、感染症を繰り返すなどの症状があらわれます。
原因は副腎または下垂体の腫瘍によるものが多いです。
治療はホルモンバランスを整える内服治療が中心で、定期検査を行いながら投薬量を調整します。生活管理も重要で、長期的に向き合う病気です。

まとめ：健康管理で寿命は伸ばせる

ミニチュアダックスフンドは遺伝性疾患や内分泌疾患、椎間板のトラブルなど、多岐にわたる病気と関連する犬種です。しかし、早期発見・予防・生活環境の工夫により、元気に長く暮らすことができます。

健康を守るポイント

✔ 滑り止めマットや段差対策
✔ 適正体重の維持
✔ 定期的な健康診断（特に心臓・眼・血液）
✔ 歩き方・皮膚・行動・飲水量の変化に気づく
ミニチュアダックスは飼い主との絆が深く、一緒に過ごす時間を何より喜ぶ犬種です。病気の特徴を知り、小さな変化を見逃さないことで、その子の生活の質（QOL）は大きく変わります。

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