チワワが罹患しやすい病気の症状と原因、治療について|獣医師が解説 NEW
予防ワクチン・健康診断 症例紹介チワワが罹患しやすい病気の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
小さな体と大きな瞳、愛らしい表情で人気の高いチワワ。
しかしその反面、体の構造や体質の特徴から、いくつかの病気にかかりやすい犬種でもあります。
今回は、チワワが特に注意すべき代表的な病気について、症状・原因・治療法・予防のポイントを獣医師の立場からわかりやすく解説します。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
チワワで最もよく見られる病気のひとつです。
後ろ足をケンケンするように歩いたり、急に足を上げたりする場合は要注意です。数秒で元に戻ることもありますが、繰り返すようであれば膝蓋骨脱臼の可能性があります。
主な原因は、膝のお皿(膝蓋骨)が本来の位置からずれることです。生まれつき膝の構造にゆるみがある子も多く、滑りやすい床や段差の昇り降り、肥満による負担も関係します。
治療は、軽度の場合は体重管理や滑り止めマット、関節サプリメントなどで経過を見ます。重度の場合は整形外科手術で関節の安定を図ります。
気管虚脱
興奮したときや散歩中に「ガーガー」「ブーブー」とアヒルのような咳をするチワワは、気管虚脱の疑いがあります。進行すると呼吸困難や失神を起こすこともあります。
気管の軟骨が弱く変形し、気管が押しつぶされることで空気の通り道が狭くなるのが原因です。遺伝的な要素に加え、肥満や首輪での圧迫、老化も悪化因子です。
治療は、軽症なら鎮咳薬や気管拡張薬、ステロイド、減量などの内科治療を行います。体重を増やさない飼育管理が大切です。
水頭症
脳の中に脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を圧迫する病気です。
頭がドーム状に膨らみ、くるくる回る、ぼんやりする、発作を起こす、視力が落ちるなどの症状が見られます。
多くは先天的な脳構造の異常ですが、感染や外傷などで後天的に発症する場合もあります。
治療は、脳圧を下げるための利尿薬や抗けいれん薬を使う内科治療が中心です。改善が難しい場合は、脳内の液体を体内に流す「脳室腹腔シャント手術」を行います。
低血糖症(特に子犬期)
チワワの子犬は体が小さいため、エネルギーを蓄える量が少なく、血糖値が下がりやすい体質です。
ふらつき、震え、元気がなくなる、倒れる、意識がなくなるなどの症状が見られたら要注意です。
原因は、食事間隔が空きすぎたことやストレス、感染、低体重などです。
治療は、お家に受け入れてからすぐに動物病院で診察を受け、低血糖を起こさない飼育管理を徹底することが大切で、不幸にも低血糖が生じてしまった時は、病院で静脈点滴による補正を行います。再発防止にはこまめなで適切な食事管理と安定した生活環境が大切です。
歯周病
チワワは歯が密集しており、歯石が溜まりやすい犬種です。
口臭が強くなる、歯ぐきが腫れる、出血する、食欲が落ちるなどの症状が見られます。放置すると歯が抜けたり、顎の骨が溶けることもあります。
原因は歯垢・歯石に含まれる細菌感染です。治療はスケーリング(歯石除去)や抜歯などを行います。
予防には、毎日の歯みがきや適切な食事管理が効果的です。
僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)
加齢とともに心臓の弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流する病気です。
初期には咳や疲れやすさ、進行すると呼吸困難や肺水腫を引き起こします。
小型犬、とくにチワワでは中年期以降に多く見られます。
治療は内服薬によって心臓の負担を減らし、病気の進行を遅らせます。定期的な心エコー検査で早期発見・早期治療を行うことが重要です。
アレルギー性皮膚炎
チワワで非常に多い皮膚トラブルのひとつです。
顔や耳、足先、わき、お腹などをしつこくかゆがったり、皮膚が赤くなったり、フケやベタつき、脱毛が見られる場合はアレルギー性皮膚炎の可能性があります。
原因はさまざまで、食物(鶏肉、牛肉などのタンパク質やおやつ)、ダニや花粉、ハウスダストなどの環境要因、あるいはノミのアレルギーなどが関係します。
治療は、原因を特定してアレルゲンを避けることが基本です。血液検査や除去食試験で原因を探り、抗アレルギー薬やステロイド、免疫抑制剤、などを行います。
適切な皮膚管理も効果的で、生活環境の清潔維持とノミ・ダニ予防が再発防止につながります。
チワワの健康を守るために
チワワは見た目の可愛らしさとは裏腹に、とても繊細な体を持っています。
滑りやすい床を避け、太らせず、ストレスをかけない生活が健康維持の基本です。
また、歯や皮膚、心臓のトラブルは徐々に進行するため、中高齢になったら年に1〜2回の健康診断や血液検査、心エコー検査を受けるようにしましょう。
毎日の観察で「歩き方が変」「咳が出る」「かゆがる」といったサインを見逃さず、早めの受診を心がけることが、チワワの長寿につながります。
獣医師からのひとこと
チワワは小さな体に多くの個性と魅力を持つ犬種です。
しかし、その小ささゆえに体調の変化が急激に現れることもあります。
ちょっとした違和感でも、飼い主さんが早く気づいてあげることが大切です。
毎日のケアと定期的なチェックで、チワワが元気に長生きできるようサポートしてあげましょう。
