犬のフィラリア症の症状と原因、治療について|獣医師が解説
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福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
わんちゃんが調子を崩すと、飼い主さんとしてとても心配になりますよね。今回は、犬のフィラリア症の症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。
フィラリア症は犬の健康に深刻な影響を与える寄生虫疾患の一つで、多くの飼い主にとって心配の種となっています。大切な愛犬をこの病気から守るための知識を深めていきましょう。
フィラリア症とは?
フィラリア症は、犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)と呼ばれる寄生虫によって引き起こされる疾患です。この虫は主に心臓や肺動脈に寄生し、「犬の心臓の寄生虫症」とも呼ばれます。進行すると重篤な症状を引き起こし、放置すると命に関わる危険性があります。
フィラリア症の原因
フィラリア症の原因は、犬糸状虫の幼虫が蚊を介して犬の体内に侵入することです。以下がその感染の流れです:
1. 蚊が感染犬の血を吸う
感染した犬の血液には犬糸状虫のミクロフィラリア(幼虫)が含まれています。これが蚊の体内で発育します。
2. 蚊が健康な犬を刺す
発育したミクロフィラリアが、蚊の唾液を通じて健康な犬の皮下に侵入します。
3. 犬の体内で成長
ミクロフィラリアは数か月かけて成虫に成長し、最終的に心臓や肺動脈に到達します。
感染は、蚊が活動する春から秋の季節に多く見られますが、温暖な地域では一年中発生する可能性があります。九州や本州などでは外飼いされた犬のフィラリア症の予防をしていないと一夏で感染することもある病気です。
フィラリア症の症状
フィラリア症の症状は、病気の進行段階によって異なります。初期の軽度な症状から、進行性の重度な症状まで幅広く見られます。
軽度の症状(初期)
• 軽い咳
• 疲れやすい
• 運動を嫌がる
中程度の症状
• 頻繁な咳
• 呼吸困難
• 運動後の倦怠感が顕著
重度の症状(進行期)
• 腹水(お腹が膨れる)
• 体重減少
• チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる)
• 貧血や黄疸
• 突然死(心臓や血管が完全に塞がれることで起こる)
症状が進むほど治療は困難になるため、早期発見が重要です。
フィラリア症の診断
フィラリア症を診断するためには、以下の検査が行われます。
1. 血液検査
ミクロフィラリアの存在や抗原検査で感染を確認します。
2. 胸部X線検査
心臓や肺動脈の状態を調べます。
3. 超音波検査(心エコー)
成虫の寄生や心臓の損傷の程度を評価します。
フィラリア症の治療
フィラリア症は、治療しても完治できない非常に深刻な病気です。治療は非常に難しく、フィラリア症にならないように予防してゆくことが最善です。その中で治療は、感染の進行度によって異なります。治療には以下の手順が含まれます。
1. 初期治療
まず犬の体力を安定させ、炎症や二次感染を防ぎます。
• 抗生物質(ボルデテラ菌の対策)
• 抗炎症剤や利尿剤
• 食事療法
2. 成虫駆除
成虫を駆除する薬を使用します(メラルソミンなど)。しかし、この治療にはリスクも伴い、成虫が死んだ後に血管を詰まらせ、犬が亡くなる可能性があります。
3. ミクロフィラリアの駆除
成虫を駆除した後、残っている幼虫を駆除します。
4. 外科的治療(重症例)
重度のケースでは、寄生虫を手術で直接除去する必要があります。この処置中に亡くなる事例も多く、しかも完治は難しい治療法です。
一度感染を許すと、心臓の形態学的変化と機能不全は一生涯続いてしまうことになり、治療は長期にわたる場合が多く、犬の年齢や体調に合わせた細やかな管理が求められます。
フィラリア症の予防
フィラリア症は安全で確実な方法で予防が可能です。以下の対策を取ることで、愛犬を守ることができます。
予防薬の投与:
月に1回、予防薬(錠剤、スポットオン、注射など)を使用します。
例:イベルメクチン、モキシデクチンを含む製品。
予防薬の注意点:
フィラリア予防薬は感染していない犬に使用することが前提です。感染している状態で投与すると、ミクロフィラリアの大量死が犬の体に負担をかけるため、使用前には必ず獣医師による血液検査を受けましょう。
まとめ
犬のフィラリア症は、蚊を媒介とする寄生虫疾患で、早期発見と予防が非常に重要です。症状が進行すると治療は困難になりますが、適切な予防薬の使用や健康管理を行うことで、この病気を確実に防ぐことができます。
愛犬の健康を守るために、以下のポイントを押さえておきましょう:
• 蚊が活発になる季節は特に注意。
• 毎年の健康診断を欠かさず受ける。
• 獣医師の指示に従い、予防薬を適切に使用する。
もしフィラリア症が疑われる症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談してください。
愛犬の健康を守るには、飼い主の早い行動が鍵となります。
この動画はフィラリア症末期の犬の様子です。呼吸が荒く、咳があり、腹水のためお腹が張っています。そしてあばらぼねが見えるくらい痩せてしまっています。
この子の血液を顕微鏡で見ると透明な細いフィラリア幼虫が血液の中を動いていることがわかります。蚊が吸血するときこの子虫を一緒に吸い上げて、他の犬を吸血することで感染してゆきます。フィラリアの予防をしっかりしておくと感染することはありません。フィラリアの予防は愛犬の命を守るために非常に重要です。