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犬の徐脈(心拍数が遅くなる病気)の症状と原因、治療について|獣医師が解説 NEW

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犬の徐脈(心拍数が遅くなる病気)の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
犬の健康診断や診察で「心拍数が遅いですね」と言われ、不安になった飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の心拍数が正常よりも遅くなる状態を徐脈(じょみゃく)と呼びます。
運動能力が高い犬や睡眠中では正常なこともありますが、中には命に関わる心臓病や全身疾患が隠れている場合もあります。
今回は犬の徐脈について、症状や原因、治療法まで獣医師が詳しく解説します。

犬の徐脈とは?

徐脈とは、心臓が通常よりゆっくり拍動している状態です。
犬の正常な心拍数は犬種や体格によって異なりますが、おおよその目安は次の通りです。
•    小型犬:100~160回/分
•    中型犬:80~120回/分
•    大型犬:60~100回/分
一般的には、この範囲を大きく下回る場合に徐脈と判断されます。
ただし、安静時や睡眠中、スポーツドッグでは生理的に心拍数が低くなることもあり、必ずしも病気とは限りません。

犬の徐脈でみられる症状

軽度の徐脈では無症状のこともあります。
しかし心拍数が低くなりすぎると、全身へ十分な血液を送れなくなり、次のような症状が現れます。
•    元気がない
•    散歩ですぐ疲れる
•    運動を嫌がる
•    失神する
•    意識を失う
•    呼吸が荒くなる 咳をする
•    ぐったりする
•    食欲が低下する
特に失神を繰り返す場合は緊急性が高く、早急な受診が必要です。

犬の徐脈の主な原因

●生理的な徐脈
病気ではない徐脈です。
•    睡眠中
•    深くリラックスしているとき
•    スポーツドッグ
•    大型犬
このような場合は特に治療は必要ありません。

●洞不全症候群
心臓のペースメーカーである洞結節の働きが低下する病気です。
特に
•    ミニチュア・シュナウザー
•    ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
•    コッカー・スパニエル
などで比較的多くみられます。
失神を繰り返す原因として重要な病気です。

●房室ブロック
心臓内の電気信号が正常に伝わらなくなる病気です。
特に**Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)**では心拍数が著しく低下し、命に関わることがあります。

●高カリウム血症
血液中のカリウム濃度が高くなると心臓の電気活動に異常が起こります。
原因としては
•    尿路閉塞
•    急性腎障害
•    副腎皮質機能低下症(アジソン病)
などがあります。

●甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症
代謝が低下する病気で、
•    徐脈
•    元気消失
•    肥満や削痩
•    脱毛
などがみられることがあります。

●薬剤の影響
以下の薬剤で徐脈が起こることがあります。
•    β遮断薬
•    ジギタリス製剤
•    一部の鎮静薬・麻酔薬
服薬中の場合は獣医師へ相談しましょう。

●神経反射
迷走神経が強く刺激されることで、一時的に徐脈になることがあります。
例えば
•    強い痛み
•    嘔吐
•    気管への刺激
などが原因になることがあります。

犬の徐脈はどのように診断する?

診断では原因を見つけることが重要です。
主な検査には
•    聴診
•    心電図検査
•    胸部レントゲン検査
•    心臓超音波検査
•    血液検査
•    電解質検査
•    甲状腺ホルモン検査や副腎機能検査
などがあります。

犬の徐脈の治療法

治療は原因によって異なります。
●原因疾患の治療
例えば
•    アジソン病ならホルモン補充
•    高カリウム血症なら電解質異常の改善
•    甲状腺機能低下症なら甲状腺ホルモン補充
など、原因を治療することで徐脈が改善することがあります。

●薬物療法
症状に応じて
•    アトロピン
•    イソプロテレノール
•    テオフィリン
などが使用される場合があります。
ただし、薬だけでは十分な改善が得られないケースもあります。

●ペースメーカー治療
重度の
•    洞不全症候群
•    完全房室ブロック
では、ペースメーカーの植え込みが最も有効な治療となることがあります。
ペースメーカーによって心拍数を適切に維持できるようになり、多くの犬で失神や運動不耐性の改善が期待できます。専門医による外科治療となります。

日常生活で注意すること

徐脈の犬では次のような点に注意しましょう。
•    激しい運動は避ける
•    興奮しすぎないようにする
•    失神した場合はすぐ受診する
•    処方薬は自己判断で中止しない
•    定期的に心電図や心臓検査を受ける
症状がなくても定期的な検査により、病気の進行を早期に発見できることがあります。

まとめ

犬の徐脈は、生理的なものから命に関わる心疾患までさまざまな原因があります。
特に失神や運動時のふらつきがみられる場合には、重大な不整脈が隠れている可能性があります。
徐脈が見つかった場合は、「様子を見る」のではなく、心電図や血液検査などで原因を調べることが大切です。
早期に適切な診断・治療を行うことで、多くの犬が安全に日常生活を送ることができます。
気になる症状がある場合は、早めに動物病院を受診し、詳しい検査を受けることをおすすめします。


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10歳のポメラニアンの避妊雌の子が咳と元気のなさを主訴に来院されました。一般身体検査で心拍数が極端に遅かったため、胸部レントゲン、心エコー、血液検査、腹部エコー、心電図検査を実施しました。その心電図の写真です。心拍数(HR)は63/minで徐脈でありました。心電図は普通、一番大きい波QRS波の前に、洞結節(心臓のペースメーカーの働きをします)由来のP波、QRS波の後にT波という3つの波が見えます。この子は増高した異常なP波(黄色の矢印)がある心電図とP波がほとんど検出できない異常な心電図(赤丸のところにP波が認められない)が検出されたため、洞結節の機能異常による徐脈と考えられました。血液検査で甲状腺機能低下症も認められたため、まずは甲状腺薬と心臓薬と気管支拡張薬の内服薬にて治療を開始しました。


投薬を始めて1週間後の心電図検査です。心拍数(HR)が146/minまで上昇し、比較的正常なP波(黄色い矢印)に続いてQRS波が認められる、いわゆる洞調律による正常な心電図に戻っていました。薬を飲ませてその当日から咳もおさまり元気も回復したので、この子は甲状腺機能低下症による洞機能不全が関与した徐脈だった可能性が示唆されました。洞機能不全の場合、ペースメーカーの埋め込み手術を行わないと失神などの危ない症状を治療できない事例もありますが、今回は内服薬でコントロールできた事例でした。