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犬の気管虚脱の症状と原因、治療について|獣医師が解説

循環器科 呼吸器科 症例紹介

犬の気管虚脱の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
犬は愛らしいパートナーとして、私たちの日常に欠かせない存在です。しかし、時に健康面で悩み事が生じることもあります。その中でも気管虚脱は、犬の呼吸に関わる深刻な問題の一つです。今回は、わんちゃんの気管虚脱の症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。

【犬の気管虚脱の症状】

気管虚脱は、犬の気管(のどや胸の入り口)の気管軟骨が弱くなり、輪状靱帯や気管筋が弾力性を失い伸び切ってしまい、気管が正常な管状の形状を保てなくなる状態を指します。これにより、気管が狭くなり、呼吸に支障を来すことがあります。気管虚脱の主な症状には以下が挙げられます:
1.    咳やゼーゼー音の発生: 犬が興奮したり、エキサイトしたりするときに、特に咳やゼーゼー音が聞こえることがあります。
2.    息切れ: 軽度から重度まで、息切れが発生することがあります。活動量が増えると一層顕著になることがあります。
3.    嘔吐: 咳き込んだりゼーゼー音を立てることによって、胃に過度の圧力がかかり、嘔吐を引き起こすことがあります。
4.    食欲不振: 呼吸が困難なため、犬は食事を摂ることが億劫になることがあります。

【犬の気管虚脱の原因】

気管虚脱の原因は複数あり、一概には特定できませんが、以下が関与しているとされています:
1.    遺伝的要因: 特に小型犬種や短頭種に多く見られます。遺伝的な軟骨の弱さが気管虚脱を引き起こすことがあります。
2.    加齢: 年齢とともに軟骨が劣化することで、気管虚脱が発症するリスクが増加します。
3.    肥満: 過体重の犬は気管に余分な圧力をかけるため、気管虚脱の発症リスクが高まります。

【犬の気管虚脱の治療法】

気管虚脱の治療法は、症状の重症度や犬の状態によって異なります。一般的な治療法には以下があります:
1.    薬物療法: 炎症を軽減するために抗炎症薬が処方されることがあります。また、気道を広げるための薬も使用されることがあります。
2.    体重管理: 肥満の犬は気道に余分な負荷をかけるため、適切な体重管理が重要です。
3.    手術: 重度の気管虚脱の場合、手術が検討されることがあります。手術には気管リング(ステント)の挿入や気管の強化などが含まれます。
犬の気管虚脱は深刻な病状であり、早期の発見と適切な治療が重要です。症状を見逃さず、獣医師との定期的な健康診断を行うことで、愛犬の健康と幸福を守る手助けができます。

犬の気管虚脱は遺伝的な要因が関与しますが、適正体重を維持するような日常の飼育管理によってほとんどの事例で発症を軽くすることができます。間食を控えるなどの食事管理が大切です。また、背後に隠れている副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患をコントロールすることで、体重の適正化や、肺間質と気管の石灰化の軽減を行うことができ、気管虚脱の症状をコントロールできる事例もあります。当院では、適切な診断のもと、内服薬や吸入薬を使用した内科治療はもちろんのこと、その子その子に合った飼育方法の提案を行なっています。また、外科手術が必要と考えられる重度の気管虚脱の子は、適切な専門病院を紹介することが可能です。飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、お気軽にお問い合わせください。

 


次郎丸動物病院へのご予約・お問い合わせ

【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

 


このレントゲン写真は気管虚脱を発症している14歳のパグの子のものです。胸の入り口の赤矢印の気道が明らかに狭くなっています。また、肺には年齢性の気管支パターンが軽く認められます。この子は短頭種症候群のため、若い頃から呼吸の音が大きく、開口呼吸を伴う呼吸困難を示すことがありました。しかし、飼い主さんの手厚い体重管理によって、中高齢になってからは呼吸困難が安定しています。つまり特別な治療を行わずに食事管理だけで気管虚脱による呼吸困難をコントロールすることができています。この飼い主さんは決まったドックフードを体重を増加させないように測って与えてくださっています。それ以外の食べ物を与えないことで、皮膚のアレルギーの発症を抑えることにも成功しています。


年齢の影響で、黒い毛に白いものが目立つようになりましたが、本人は呼吸困難もなく至ってご機嫌です。