「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編9|体質が関連する皮膚病:パターン脱毛、ビタミンA反応性皮膚炎|獣医師が解説
皮膚科 症例紹介「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編9|体質が関連する皮膚病:パターン脱毛、ビタミンA反応性皮膚炎|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編9」です。
【24.体質が関連する皮膚病:パターン脱毛、ビタミンA反応性皮膚炎】
犬や猫の皮膚病の中には、特定の体質や遺伝的な要因が関連しているものがあります。今回は、パターン脱毛とビタミンA反応性皮膚炎という、体質に関連した皮膚病について解説します。
1. パターン脱毛(Pattern Baldness)
症状:
パターン脱毛は、特定の部位で対称的な毛の薄れや脱毛が見られる皮膚病です。特に耳の後ろ、首、胸、背中などで脱毛が顕著になることがあります。この脱毛は徐々に進行し、皮膚は滑らかで炎症を伴わないのが特徴です。
原因:
パターン脱毛は、遺伝的な要因が大きく関与しており、特定の犬種(例:ダックスフンド、グレイハウンド、ボクサーなど)でブラックタンやチョコタンなどの毛色によく見られます。ホルモンのバランスや皮膚の成長サイクルが影響している可能性がありますが、詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。
治療:
この脱毛は通常、痛みや痒みを伴わないため、特別な治療は必要ないことが多いですが、美観や毛の再生を望む場合には、ホルモン療法やサプリメントの使用が提案されることもあります。重篤な症状が現れない限り、日常生活に大きな影響を与えることは少ないです。
チョコタンのチワワの子の仰向けの写真です。首下から胸お腹にかけて正中線に沿ってかゆみを伴わない脱毛が認められます。このような位置にかゆみを伴わない脱毛が認められる場合、パターン脱毛を疑います。他にミニチュアダックス、ボストンテリア、パグなどの犬種に良く見られますが、健康上の問題がほとんど起こらないために、治療を行う必要はありません。(治療を行なっても回復する事例は少ないと思われます)
2. ビタミンA反応性皮膚炎(Vitamin A Responsive Dermatosis)
症状:
ビタミンA反応性皮膚炎は、フケの増加や厚い角質の形成、毛の抜けが見られる疾患です。特にセバシア犬種(例:コッカースパニエル)に多く見られ、耳や顔、背中に皮膚の硬化やフレーク状の皮膚変化が見られることが一般的です。痒みや炎症が見られることもあります。
原因:
ビタミンAが皮膚の健康維持に重要な役割を果たすため、体質的にビタミンAの代謝や吸収が適切に行われない場合、この疾患が発生します。具体的には、皮脂腺の機能が異常をきたすことによって皮膚が乾燥し、フケや角質が蓄積されやすくなります。
治療:
この疾患の治療には、ビタミンAの補給が効果的です。サプリメントとしてビタミンAを摂取することで、皮膚の健康が改善され、症状が軽減することが期待されます。ただし、ビタミンAの過剰摂取は逆に健康に害を及ぼすことがあるため、獣医師の指導のもとで適切な量を投与することが重要です。
まとめ
これらの皮膚病は、ペットの体質や遺伝的な要因に大きく関係しています。予防が難しいケースも多いですが、適切なケアと早期の対応によって症状を管理することができます。皮膚の異常や脱毛が見られた場合には、早めに獣医師に相談し、適切な治療を行うことが大切です。