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「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編7|腫瘍が関連する皮膚病:皮膚型リンパ腫、肥満細胞腫|獣医師が解説 NEW

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「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編7|腫瘍が関連する皮膚病:皮膚型リンパ腫、肥満細胞腫|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編7」です。

【22.腫瘍が関連する皮膚病:皮膚型リンパ腫、肥満細胞腫】

ペットの皮膚病には様々な原因がありますが、腫瘍が関連するものも少なくありません。特に、皮膚型リンパ腫と肥満細胞腫は、犬や猫に多く見られる代表的な腫瘍性皮膚病です。今回は、それぞれの症状や原因、治療について解説します。

1. 皮膚型リンパ腫(Cutaneous Lymphoma)

症状:

皮膚型リンパ腫は、リンパ球という白血球の一種が皮膚に異常増殖することで起こります。この病気では、皮膚に赤みを帯びた斑点や結節(しこり)が現れ、かゆみや痛みを伴うことがあります。進行すると、皮膚が潰瘍状になり、治りにくい傷ができることもあります。

原因:

リンパ腫は免疫システムに関連する癌の一種で、原因ははっきりしていませんが、遺伝的要因や免疫系の異常が関与していると考えられています。

治療:

治療には化学療法や放射線療法が使われることが多く、症状を抑えるためにステロイド剤が処方されることもあります。治療の効果は個々のケースによりますが、早期発見が重要です。


趾端皮膚炎と思われた治りにくい後ろ足の腫瘤皮膚炎が皮膚型のリンパ腫であった事例です。

2. 肥満細胞腫(Mast Cell Tumor)

症状:

肥満細胞腫は、肥満細胞というアレルギー反応に関与する細胞が異常増殖してできる腫瘍です。皮膚に小さなしこりが現れ、時間とともに大きくなることがあります。しこりは触ると柔らかいこともあれば、固くなる場合もあります。肥満細胞はヒスタミンを放出するため、炎症やかゆみを伴うことが多く、周囲の組織に腫れが生じることもあります。

原因:

肥満細胞腫の原因も完全には解明されていませんが、特定の犬種(例: ボクサー、ブルドッグ、パグ、ゴールデン・レトリバー)はリスクが高いとされています。

治療:

肥満細胞腫の治療は、腫瘍の手術による切除が第一選択となります。場合によっては、手術後に化学療法や放射線療法が行われることもあります。早期に手術することで予後が大きく改善する可能性があります。


写真のように皮膚型の肥満細胞腫は大きなオデキとして発見されることが多く、外科手術と化学療法や分子標的薬にて治療します。

まとめ

これらの腫瘍性皮膚病は、早期の診断と治療が極めて重要です。皮膚に異常な腫瘤やしこりが見られた場合は、早めに獣医師に相談することをお勧めします。


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