症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編6|内分泌ホルモンが関連する皮膚病:副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、アロぺシアX|獣医師が解説

皮膚科 症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編6|内分泌ホルモンが関連する皮膚病:副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、アロぺシアX|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編6」です。

【21.内分泌ホルモンが関連する皮膚病:副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、アロぺシアX】

ペットの健康管理において、皮膚病は飼い主にとって非常に気になる問題の一つです。皮膚は外部環境と直接接触するため、さまざまな原因で炎症や異常が生じやすい部位です。中でも、内分泌ホルモンのバランスが崩れることが原因となる皮膚病は、特に注意が必要です。今回は、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、アロペシアXといった内分泌ホルモンが関連する皮膚病について詳しく解説します。

1. 副腎皮質機能亢進症(Cushing症候群)

症状:

•    皮膚の薄化と毛の抜け落ち
•    頻繁な感染症(特に皮膚感染症)
•    多飲多尿
•    体重増加、特に腹部周りの肥満
•    筋力低下

原因:

副腎皮質機能亢進症は、副腎から過剰にコルチゾールが分泌されることで発生します。原因としては、副腎腫瘍や長期にわたるステロイド薬の使用が挙げられます。

治療:

原因に応じた治療が必要です。副腎腫瘍が原因の場合は外科的切除が検討されます。薬物療法では、コルチゾールの生成を抑制する薬剤が使用されます。また、症状の管理として抗生物質や抗真菌薬の投与が行われることもあります。

2. 甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)

症状:

•    皮膚の乾燥とふけ
•    毛の脆弱化と抜け毛
•    体重増加
•    活動性の低下
•    低体温

原因:

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足により代謝が低下する状態です。自己免疫性甲状腺炎が主な原因であり、遺伝的要因も関与しています。

治療:

甲状腺ホルモン補充療法が主な治療法です。レボチロキシンなどの甲状腺ホルモン製剤を定期的に投与することで、ホルモンバランスを正常化させます。定期的な血液検査でホルモンレベルをモニタリングし、適切な投薬量を調整します。

3. アロペシアX(Alopecia X)

症状:

•    頭部や体の特定部位での脱毛
•    皮膚の変色や異常
•    被毛の質の低下

原因:

アロペシアXは、ホルモンバランスの乱れが原因とされる脱毛症です。特に成長期と休止期のホルモンの変動が関与していると考えられています。具体的なホルモンの異常についてはまだ完全には解明されていませんが、メラノサイトの機能不全や成長ホルモンの不足が関連している可能性があります。

治療:

治療法は症状の重さや原因により異なります。体に異常をきたさない場合、無治療とすることも多いです。ホルモン療法として、プロゲステロンやテストステロンの補充が行われることがあります。また、被毛の再生を促すために栄養補助食品や特定のシャンプーを使用することもあります。重度の場合は、獣医師と相談の上、適切な治療計画を立てることが重要です。


治療前


治療後

まとめ

内分泌ホルモンのバランスは、ペットの皮膚の健康に大きな影響を与えます。副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、アロペシアXなどの内分泌関連の皮膚病は、早期発見と適切な治療が鍵となります。ペットに異常な皮膚の症状が見られた場合は、自己判断せずに速やかに獣医師に相談することをお勧めします。


次郎丸動物病院へのご予約・お問い合わせ

【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後