症例紹介

犬の甲状腺機能低下症の症状と原因、治療について|獣医師が解説

内分泌科 症例紹介

犬の甲状腺機能低下症の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
わんちゃんが調子を崩すと、飼い主さんとしてとても心配になりますよね。今回は、わんちゃんの甲状腺機能低下症の症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。

犬の甲状腺機能低下症(Canine Hypothyroidism)は、甲状腺ホルモンの不足による疾患で、甲状腺が正常に機能しないため、代謝の異常(体に必要な物質を吸収したり、作り替えたり、分解したりする働きに異常をきたすこと)が生じます。以下に、犬の甲状腺機能低下症に関する症状、原因、治療について獣医師が解説します。

【犬の甲状腺機能低下症の症状】

犬の甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたり、個体によって異なることがあります。一般的な症状には以下のようなものがあります:
1.    体重増加
2.    食欲不振
3.    運動の減少
4.    皮膚の問題(乾燥、脱毛、皮膚炎)
5.    毛の色が変化することがある
6.    疲労感や無気力(活動量が低下し、明らかに動きたがらなくなります。)
7.    便秘
8.    冷えやすくなる(このため暖かいところへ行ってよく寝てる様な行動パターンになります。)
9.    頻尿
10.    眼の炎症
これらの症状は甲状腺ホルモンの不足によって引き起こされ、代謝の調整やエネルギー産生に影響を与えます。

【犬の甲状腺機能低下症の原因】

犬の甲状腺機能低下症の主要な原因は、甲状腺の自己免疫疾患によるものです。この疾患により、免疫系が誤って甲状腺組織を攻撃し、甲状腺ホルモンの産生が減少します。他にも甲状腺の炎症、腫瘍、手術などによる甲状腺の損傷も原因となることがあります。

【犬の甲状腺機能低下症の治療】

犬の甲状腺機能低下症は診断が確立された場合、薬物療法によって管理されることが一般的です。主な治療法は以下の通りです:
1.    甲状腺ホルモン補充療法: 獣医師が処方する甲状腺ホルモン(レボチロキシンなど)を食事とともに投与します。ホルモン補充療法により、犬の体内のホルモンレベルが正常化され、症状が改善します。
2.    定期的なモニタリング: 獣医師が犬の甲状腺ホルモンレベルを定期的にチェックし、適切なホルモン補充療法の調整を行います。
3.    食事: 甲状腺機能低下症の犬には、特別な食事療法が必要な場合があります。獣医師の指示に従い、適切な食事を提供することが重要です。

症状の改善には時間がかかることがあり、獣医師の指導に従い、治療とモニタリングを継続することが大切です。治療が適切に行われると、犬は通常、健康な生活を送ることができます。中高齢(7、8歳以上)で、太りやすく、毛艶が悪くなり、動きも活発でなくなり、なんだか急に老け込んでしまった印象のワンちゃんは甲状腺機能低下症に罹患していることがあります。この様なワンちゃんでも治療により若返り、本来の元気を取り戻し、表情から変わってくることが多いです。また、体重増加や代謝の悪化により、足腰に問題が起こり立てなくなったり、糖尿病のコントロールが難しかった子も、甲状腺機能低下の治療によって回復することもあります。つまり甲状腺機能低下症は他の病気を治りにくくしたり、悪化させていることにつながっているケースもあります。なんだか病院で治療していてもパッとしない場合、背後にある病気として疑われることも多いです。
当院では、飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、何か気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。


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この子のように、なんだか「悲しそう」な表情をして、少しぽっちゃりしていて、おとなしく、毛艶が悪い中型犬に甲状腺機能低下症はよく認められます。この子は甲状腺機能低下症に、コントロールの難しい糖尿病も併発していました。


甲状腺ホルモン薬を投薬はじめて2ヶ月後には、見違えるような毛艶と活気の回復、良好な糖尿病のコントロールができるようになりました。見た目も明らかに若返っています。このように甲状腺機能低下症は、中高齢の犬の、なんとなく調子の悪い状態の原因になっていることがあります。