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「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編8|自己免疫性疾患が関連する皮膚病:天疱瘡、エリテマトーデス|獣医師が解説

皮膚科 症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編8|自己免疫性疾患が関連する皮膚病:天疱瘡、エリテマトーデス|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編8」です。

【23.自己免疫性疾患が関連する皮膚病:天疱瘡、エリテマトーデス】

自己免疫性疾患は、自分の免疫力が何らかの原因で暴走して自分の細胞を攻撃してしまうことにより生じる疾患です。それが皮膚に対して主に症状が起こるものが自己免疫性皮膚疾患です。ペットの皮膚病の中でも特に複雑で難治性のものが多いです。今回は、天疱瘡(ペンフィゴス)とエリテマトーデス(ループス)という、代表的な自己免疫性皮膚疾患について解説します。

1. 天疱瘡(Pemphigus)

症状:

天疱瘡は、免疫システムが自身の皮膚細胞を攻撃することによって、皮膚に水疱や膿疱(小さな膿が溜まった水ぶくれ)ができる疾患です。特に鼻や耳、口周りなどにこれらの水疱が見られることが多く、破裂すると痛みを伴うかさぶたや潰瘍に変わります。天疱瘡には複数のタイプがあり、症状の範囲や重症度が異なります。

原因:

天疱瘡は、免疫システムが皮膚の表層にある細胞同士の接着を壊すことで発症します。この原因ははっきりしていませんが、遺伝的要因や環境要因、感染症や薬剤の使用が引き金になることがあるとされています。

治療:

治療には、免疫抑制薬やコルチコステロイド(ステロイド)を用いて、免疫系の攻撃を抑える方法が一般的です。また、感染症の予防や二次的な皮膚炎の管理も重要です。天疱瘡は再発しやすい疾患であるため、継続的な治療と経過観察が必要です。

2. エリテマトーデス(Lupus)

症状:

エリテマトーデスには、全身性エリテマトーデス(SLE)と皮膚限局型エリテマトーデス(DLE)の2つのタイプがあります。SLEでは、皮膚に加えて内臓や関節などにも影響を及ぼすため、全身症状が見られます。典型的な皮膚症状として、鼻や顔に潰瘍や脱毛が見られます。DLEは皮膚にのみ影響を与え、特に鼻の周りにかさぶたや脱毛、色素沈着が見られます。

原因:

エリテマトーデスは、免疫システムが自身の健康な細胞を異物と誤認して攻撃する自己免疫疾患です。遺伝的な要因に加え、環境的なトリガー(紫外線、感染症など)が発症の引き金になることがあります。

治療:

SLEでは、ステロイドや免疫抑制剤を用いて免疫反応を抑えることが治療の中心となります。DLEにおいても、ステロイド外用薬や免疫抑制療法が用いられます。また、紫外線が症状を悪化させるため、日光の制限や保護が重要です。

まとめ

自己免疫性疾患による皮膚病は、治療に長期の管理が必要であり、再発する可能性が高いです。早期発見と継続的な治療が重要で、ペットに異常な皮膚症状が現れた場合は、迅速に獣医師の診断を受けることが大切です。





この子たちは自己免疫性の皮膚疾患が疑われる犬の事例です。自己免疫性の皮膚疾患はパンチバイオプシーという方法で皮膚の一部を摘出し病理検査で診断しなければならないため、全身麻酔での処置が必要になります。リスクがあるため、この子たちは確定診断がついていません。しかし、ステロイドや免疫抑制剤でもコントロールが難しい鼻梁部や耳介部や眼や口腔内や趾端の炎症病変が合併していることから自己免疫性の皮膚疾患(落葉状天疱瘡や皮膚エリテマトーデスなど)が疑われます。現在は症状に応じてステロイドの外用薬や内服薬、その他の症状に対する対症療法を行うことでご機嫌に生活ができていますが、どうしても悪化することがあります。


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