猫の外耳炎など耳の炎症の症状と原因、治療について|獣医師が解説 NEW
皮膚科 症例紹介猫の外耳炎など耳の炎症の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
猫は犬に比べると外耳炎の発症頻度が低いと言われていますが、一度発症すると慢性化しやすく、痒みや痛みで強いストレスを感じることがあります。特に高齢猫やアレルギー体質の猫では、耳のトラブルが長期間続くことも珍しくありません。
この記事では、猫の外耳炎の症状・原因・治療法・自宅でできるケアについて、獣医師がわかりやすく解説します。
猫の外耳炎の主な症状
外耳炎は、外耳道(耳の穴から鼓膜の手前まで)の炎症です。症状は以下のように現れます。
• 耳をしきりに掻く、こすりつける
• 頭を振る、傾ける
• 耳の中が赤い、腫れている
• 黒い耳垢(特にミミヒゼンダニの場合)
• 悪臭のある耳垢(細菌・酵母菌の増殖時)
• 耳の中がベタつく、油っぽい
• 痛がって触らせない
• 重症では食欲不振や元気消失
猫は痛みを隠す傾向があるため、軽度のうちに気づきにくいこともあります。
外耳炎の主な原因
猫の外耳炎は、単一の原因ではなく複数の要因が重なって発症することがよくあります。
● ミミヒゼンダニ(耳ダニ)
特に子猫や外で暮らしていた猫に多く、黒いコーヒーかすのような耳垢が溜まります。強いかゆみが特徴です。
● 細菌感染
皮膚表面に存在する常在菌が増えすぎることで炎症を起こします。湿気や慢性皮膚疾患が背景にあることが多いです。
● 酵母菌(マラセチア)感染
耳の中がしっとり湿り、独特のにおいを伴うことがあります。アレルギー体質の猫でよく見られます。
● 体質やアレルギー(食物アレルギー・アトピーなど)
猫の血統によっては、外耳道炎を引き起こしやすい種類があります。(スコティッシュなど)。また猫のアレルギー症状は皮膚だけでなく耳にも強く出ることがあります。再発を繰り返す外耳炎ではアレルギーを疑うべきです。
● 異物(植物の種、砂など)
耳に入り込んだ異物が刺激となり急性炎症を起こします。急に耳を気にし始めた場合に疑われます。
● 腫瘍
高齢猫や片側の耳だけに頑固な炎症が続く場合、外耳道腫瘍が隠れていることもあります。
外耳炎の治療方法
外耳炎の治療は、「原因の特定」と「炎症を抑えること」が重要です。自己判断で扱うと悪化することがあるため、必ず動物病院で診断を受けてください。
● 耳垢や細菌・菌種の検査
顕微鏡検査または耳垢の染色検査を行い、ダニ・細菌・酵母菌の有無を判断します。
● 耳道の洗浄
獣医師が専用洗浄液で耳の汚れを優しく取り除きます。家庭で無理に綿棒を使用すると鼓膜の損傷や炎症の悪化につながるため注意が必要です。
● 抗生剤・抗真菌薬・抗寄生虫薬
原因に応じて、点耳薬または内服薬を用います。
・耳ダニ → 駆虫薬
・細菌 → 抗生剤
・マラセチア → 抗真菌薬
● ステロイドや抗炎症薬
かゆみや炎症を抑える目的で使用します。適切な量と期間が重要です。
● アレルギー治療
再発性外耳炎では、食事療法(アレルギー療法食)や免疫調整薬が必要になることがあります。
● 手術治療(重度例)
耳道が狭くなった慢性外耳炎や腫瘍の場合、外科的治療が必要になることもあります。
自宅でできるケアと予防
外耳炎は再発しやすいため、普段からのケアが大切です。
● 耳の中をこまめに観察する
赤み、におい、耳垢の変化がないかチェックしましょう。
● 症状があれば早めに動物病院を受診
外耳道の洗浄は、自宅ではなかなか難しいので、早めに動物病院を受診し、外耳道の洗浄治療などの適切な治療を病院で受けた方が良いです。アレルギー体質の猫は特に予防洗浄が有効です。
● 湿度管理をする
日本の夏は特に細菌や酵母菌が増えやすいため、エアコンや除湿機で湿度を調整しましょう。
● アレルギー対策
食物アレルギーが疑われる場合はフード変更が必要です。(グレインフリーのものなど)また、おやつ類を与えている場合は、やめた方がアレルギー物質に触れる頻度が下がるため無難です。
● 他の猫からの感染予防
耳ダニは感染力が強く、多頭飼いでは全頭治療が必要になる場合があります。
まとめ
猫の外耳炎は、軽度でも強いかゆみや痛みを伴い、放置すると慢性化して治りにくくなります。原因はミミヒゼンダニ・細菌・マラセチア・アレルギーなど多岐にわたり、正確な診断が治療の第一歩です。
耳をよく掻く、においがする、黒い耳垢が出る、頭を振るなどの症状が見られたら、早めに動物病院を受診してください。適切な治療をすることで、ほとんどの猫は快適な生活を取り戻すことができます。
