猫の脂肪肝(肝リピドーシス)の症状と原因、治療について|獣医師が解説
消化器科 一般診療科 症例紹介猫の脂肪肝(肝リピドーシス)の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
猫の健康に関わる重要なトピック、猫の脂肪肝(肝リピドーシス)について、その症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。
【猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とは何ですか?】
脂肪肝、または肝リピドーシスは、猫における一般的な肝臓の疾患です。これは、肝臓が過剰な脂肪を貯め込む状態を指します。正常な状態では、肝臓には少量の脂肪が存在しますが、脂肪肝の場合、この脂肪が異常に増加し、肝機能に影響を与えることがあります。
肝臓に脂肪が蓄積してしまうには理由があります。それは太った猫ちゃんが急に食欲不振になった時に生じます。
体は飢餓状態になるとブドウ糖(炭水化物)以外のものをエネルギーとして燃やしてエネルギーを作ろうとします。そこで、カロリーの高い脂肪を燃やしてエネルギーにしようとしますが、そのためには肝臓で代謝を受けてグリコーゲンなどのエネルギー産生物質に変換させる必要があります。肥満した猫では食欲が少し落ちた時にすぐに大量の脂肪(コレステロールやトリグリセリドなど)が血液中に放出されるため、肝臓がそのキャパシティを超えてしまい、脂肪をエネルギーに変換することができなくなります。こうなると肝臓の細胞が脂肪組織と置き換わって蓄積してしまい、脂肪肝が発症します。その状態が続くと肝臓の細胞が破壊される肝硬変に発展します。
この状態を改善するには猫ちゃんの食欲不振や飢餓状態を回復させることが一番ですが、このような猫ちゃんは食欲が廃絶し、頑固な食欲不振を示すため、猫の脂肪肝(肝リピドーシス)は治療が非常に厄介な病気です。時に治療に関わらず亡くなってしまうことがある恐ろしい病気です。
【猫の脂肪肝(肝リピドーシス)の症状はどのようなものですか?】
猫の脂肪肝にはさまざまな症状が現れる可能性がありますが、その中には次のようなものがあります:
1. 食欲不振
2. 肥満している猫ちゃんが体重減少してくる
3. 脱水
4. 嘔吐や下痢
5. 活発さの欠如
6. 時に猫の三臓器炎と呼ばれる状態が合併し、黄疸が出て、白目が黄色になることがあります。
これらの症状が見られた場合、すぐに獣医師の診察を受けることが重要です。
【猫の脂肪肝(肝リピドーシス)の原因は何ですか?】
脂肪肝の原因は多岐にわたりますが、上記にあるように肥満している猫ちゃんが急に食欲不振になることです。最も一般的な原因は以下のとおりです:
1. 食事の変化や制限:急激なダイエットや絶食が脂肪肝を引き起こすことがあります。
2. 肥満:肥満は猫における脂肪肝のリスクを高めます。
3. 同時に発症した他の疾患:糖尿病や膵炎などの疾患と同時に脂肪肝が発生することがあります。
【猫の脂肪肝(肝リピドーシス)の治療方法はありますか?】
脂肪肝の治療にはいくつかのアプローチがありますが、まず最初に行うべきことは、肝臓に脂肪を蓄積させる原因を特定し、それを修正することです。そして廃絶した食欲をなんとか回復させることです。これには、栄養療法の改善や適切な食事管理が含まれます。また、脂肪肝の重症度によっては、点滴や栄養補助剤の投与などの支援療法が必要になる場合もあります。
【まとめ】
猫の脂肪肝は深刻な救急状態であり、早期に診断と治療を開始することが重要です。普段の生活の食事管理に気を配り、総合栄養食のみでの給餌など適切な食事の提供は、猫の健康を維持するために不可欠です。症状が見られた場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
脂肪肝は重篤な疾患ですが、適切な治療と管理によって管理可能な状態にすることができます。猫の健康を守るために、定期的な健康チェックと予防措置を行いましょう。
当院では、猫の食欲を維持して脂肪肝をなんとか回復させた事例をたくさん経験しています。猫はその子の性格や体質の特殊性から、オーダーメードの治療法を選択する必要があります。飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、お気軽にお問い合わせください。
これはオスの肥満した猫のレントゲン写真です。腹囲が膨満し、肝臓が少し大きくなっているので、食欲不振が起こると脂肪肝に発展する可能性が心配されます。
チュールやおやつなどは肥満を助長しますので給餌しない方が良いと思いますが、実は猫ちゃんはカリカリの総合栄養食だけで飼っていても、どうしても肥満してしまう子がいます。そのような子は給餌量を正確に測って与え、定期的に体重を測定し、せめて現状維持を目指すようにしてゆきましょう。それが一番安全なダイエット方法です。
猫のダイエットは、その体重が落ちるその最中で脂肪肝を発症してしまうことがあるので、非常に難しいので、動物病院などと連携しながら行うようにしましょう。また、フードの変更で急な食欲不振を誘発し脂肪肝を発症してしまうこともあるので、一歳未満の子猫のうちに、様々な総合栄養食を試して、嗜好性の偏りをなくしておくことが脂肪肝の予防につながることがあります。ただ、成猫になってからはコンスタントによく食べて、下痢吐き戻しを起こさない、その子に合う総合栄養食のフードを、あまり変更せずに与える方が安定して健康な状態を維持できると考えられます。