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猫の腹水の症状と原因、治療について|獣医師が解説

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猫の腹水の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「お腹が急に膨らんできた」「食欲がなく元気もない」。このような症状がみられる猫では、腹水(ふくすい)がたまっている可能性があります。
腹水は病気そのものではなく、何らかの重大な病気によってお腹の中に液体がたまっている状態を指します。原因によって治療法や予後は大きく異なるため、早期の診断が非常に重要です。
今回は猫の腹水について、症状、原因、検査、治療法を獣医師が詳しく解説します。

腹水とは?

腹水とは、お腹の中(腹腔)に通常より多くの液体がたまった状態です。
健康な猫でも腹腔には少量の液体がありますが、病気によって大量に増えるとお腹が膨らみ、さまざまな症状が現れます。
腹水は透明な液体だけでなく、血液、リンパ液、膿などの場合もあります。

猫の腹水でみられる症状

腹水が少量の場合は症状がほとんどありません。
しかし、量が増えるにつれて次のような症状がみられます。
・お腹が大きく膨らむ
・元気がなくなる
・食欲が低下する
・体重が急に増える
・歩きたがらない
・呼吸が苦しそうになる
・横になっている時間が長くなる
・嘔吐や下痢を伴うことがある
腹水が大量になると横隔膜が押し上げられ、肺が十分に広がらなくなるため、呼吸困難になることがあります。

猫の腹水の主な原因

●猫伝染性腹膜炎(FIP)
若い猫で最も重要な原因の一つです。
特にウェットタイプのFIPでは、黄色く粘り気のある腹水が大量にたまることがあります。
次のような症状を伴うことが多くあります。
・発熱
・食欲不振
・体重減少
・元気消失
近年は有効性の高い抗ウイルス薬が登場し、以前より治療成績は大きく改善しています。
●心臓病
心筋症などによって右心不全になると、血液がうっ滞し腹水がたまることがあります。
同時に以下の症状がみられることがあります。
・呼吸が速い
・胸水がたまる
・運動を嫌がる
・失神
高齢猫では比較的よくみられる原因です。
●肝臓病
肝硬変や重度の肝疾患では、
・アルブミンの低下
・門脈圧の上昇
によって腹水が生じます。
黄疸や食欲低下を伴うこともあります。
●腫瘍
高齢猫では腹腔内の腫瘍も重要な原因です。
例えば
・リンパ腫
・肝臓腫瘍
・脾臓腫瘍
・腹膜播種
などで腹水が認められます。
腹水の中に腫瘍細胞が認められることもあります。
●その他の原因
以下のような病気でも腹水がみられます。
・腹膜炎
・出血
・膵炎
・尿漏れ(尿腹)
・胆汁漏出
・リンパ液の漏出
原因は多岐にわたるため、見た目だけで診断することはできません。

動物病院で行う検査

腹水の原因を調べるために複数の検査を組み合わせます。
主な検査には次のものがあります。
・身体検査
・血液検査
・超音波検査
・レントゲン検査
・腹水穿刺
・腹水の細胞診
・細菌培養
・PCR検査(必要に応じて)
特に腹水を採取して色や性状、タンパク濃度、細胞の種類を調べることは診断の大きな手掛かりになります。

腹水の治療

腹水そのものを治すのではなく、原因となる病気を治療することが基本です。
●FIPの場合
現在は抗ウイルス薬による治療が第一選択となっています。
治療開始が早いほど改善が期待できます。
●心臓病の場合
・利尿薬
・ACE阻害薬
・ピモベンダン(病態によって使用)
・その他の心不全治療
などを行います。
●肝疾患の場合
・肝臓保護薬
・食事療法
・原因疾患への治療
を行います。
●腫瘍の場合
・外科手術
・抗がん剤
・緩和治療
病気の種類によって治療方針は大きく異なります。

腹水を抜く治療は必要?

腹水が大量にたまり呼吸が苦しい場合には、腹水を抜く(腹水穿刺)ことがあります。
ただし、腹水を抜くだけでは根本的な治療にはなりません。
また、一度に大量の腹水を除去すると血圧低下や循環不全を起こすことがあるため、必要最小限に行うことが一般的です。

自宅で様子を見てもよい?

猫のお腹が急に膨らんできた場合は、自宅で様子を見ることはおすすめできません。
特に次のような症状がある場合は早急な受診が必要です。
・呼吸が苦しそう
・食欲が全くない
・ぐったりしている
・お腹が短期間で急に大きくなった
・歯ぐきが白い
これらは命に関わる病気が隠れている可能性があります。

予防できる?

腹水自体を予防する方法はありません。
しかし、
・定期健康診断
・ワクチン接種
・室内飼育
・適正体重の維持
・高齢猫の定期検査
を行うことで原因となる病気を早期に発見できる可能性があります。

まとめ

猫の腹水は、さまざまな病気の結果として起こる重要な症状です。
特にFIP、心臓病、肝疾患、腫瘍などでは早期診断が予後を左右します。
お腹が膨らんでいるだけでなく、食欲低下や元気消失、呼吸の異常がみられる場合は、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
腹水は原因によって治療法が大きく異なります。適切な検査を受け、原因に応じた治療を開始することが猫の健康を守るために最も重要です。


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この画像は猫の腹部エコーです。黒く見えるところは腹水が溜まっているところです。腹部エコー検査は、腹水があるかを感度よくかつ非侵襲的に診断することができます。