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猫の眼の痛み、特に前部ぶどう膜炎の症状と原因、治療について|獣医師が解説 NEW

眼科 症例紹介

猫の眼の痛み、特に前部ぶどう膜炎の症状と原因、治療について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
猫が「目をしょぼしょぼさせている」「片目だけ開けにくそう」「触ると嫌がる」
このような仕草が見られたとき、単なる結膜炎ではなく前部ぶどう膜炎という、強い眼痛を伴う病気が隠れていることがあります。
前部ぶどう膜炎は放置すると失明に至る可能性もある重要な疾患です。
今回は獣医師の立場から、症状・原因・治療について分かりやすく解説します。

前部ぶどう膜炎とは?

ぶどう膜とは、
•    虹彩
•    毛様体
•    脈絡膜
からなる、眼の内部で血流が豊富な組織です。
このうち、虹彩と毛様体に炎症が起こった状態を「前部ぶどう膜炎」と呼びます。
猫では比較的よく見られ、しかも原因が全身疾患に及ぶことが多いのが特徴です。

猫の前部ぶどう膜炎で見られる主な症状

前部ぶどう膜炎の症状は、「目の赤み」だけではありません。
痛み由来のサインが非常に重要です。
眼に現れる症状
•    目を細める、閉じたままにする
•    まぶしそうにする(羞明)
•    涙が増える
•    白目や虹彩周囲の充血
•    瞳孔が縮んだままになる(縮瞳)
•    目の色が濁って見える
•    前房内に白い濁りや沈殿物が見えることもある
行動・全身症状
•    触られるのを嫌がる
•    元気がない、食欲が落ちる
•    顔を触られるのを極端に嫌がる
•    高齢猫では症状が分かりにくいこともある
特に「片目だけしょぼしょぼする」場合、前部ぶどう膜炎は必ず鑑別に入ります。

前部ぶどう膜炎が起こる原因

猫の前部ぶどう膜炎は、原因が1つとは限らないことが多く、以下のように分類されます。
●感染症
猫で非常に重要な原因です。
•    猫免疫不全ウイルス(FIV)
•    猫白血病ウイルス(FeLV)
•    猫伝染性腹膜炎(FIP)
•    トキソプラズマ症
•    ヘルペスウイルス感染
特にFIP関連ぶどう膜炎では、眼症状が初発となることもあります。

●外傷・眼の局所トラブル
•    猫同士のケンカによる打撲や咬傷
•    角膜損傷や穿孔
•    眼内異物
外傷が軽度でも、眼の内部で炎症が進行しているケースは珍しくありません。

●腫瘍性疾患
•    眼内リンパ腫
•    全身性腫瘍の眼内転移
特に高齢猫で片側性・治療反応が悪い場合は要注意です。

●免疫介在性・特発性
•    明確な原因が特定できないケース
•    免疫異常による炎症
検査を尽くしても原因が分からない場合でも、痛みと炎症のコントロールは必須です。

前部ぶどう膜炎の治療

治療は大きく分けて
**「眼の炎症を抑える治療」と「原因に対する治療」**の2本柱です。

●眼の炎症と痛みを抑える治療
まず最優先なのは、猫の強い眼痛を取り除くことです。
•    ステロイド点眼または非ステロイド点眼
•    散瞳薬(瞳孔を開いて痛みを軽減する)
•    必要に応じて全身性の消炎鎮痛薬
前部ぶどう膜炎では、縮瞳そのものが痛みの原因になるため、散瞳治療は非常に重要です。

●原因疾患への治療
原因が特定できた場合は、それに応じた治療を行います。
•    感染症:抗ウイルス薬、抗原虫薬、支持療法
•    外傷:抗生剤、角膜保護(エリザベスカラーの着用)
•    腫瘍:抗がん治療や緩和ケア
原因不明の場合でも、炎症を放置しないことが失明予防につながります。

放置するとどうなる?

前部ぶどう膜炎を放置すると、以下のような合併症が起こります。
•    緑内障
•    白内障
•    網膜剥離
•    永続的な視力低下・失明
「そのうち治るだろう」と様子を見るのは非常に危険です。

飼い主さんへのメッセージ

猫は痛みを我慢する動物です。
目を細める・元気がないというサインは、すでにかなり不快な状態であることを意味します。
•    片目だけおかしい
•    目薬をしても改善しない
•    元気や食欲が落ちている
このような場合は、早めに動物病院で眼科検査を受けてください。
前部ぶどう膜炎は、
早期発見・早期治療で視力を守れる病気です。


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【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

高齢の猫ちゃんで目の痛みを主訴に来院された事例です。目の内側に白黄色のモヤモヤ(赤矢印)が見えます。前眼房フレアといい、瞳孔が閉まった状態(縮瞳)と合わせて前部ぶどう膜炎でよく認められる症状です。本事例はステロイド(消炎剤)の点眼薬を病院通院時に点眼することで症状が安定しています。(一時は前眼房フレアも消失しましたが、現在は少し残留しています)記事にもあるとおり、前部ぶどう膜炎は全身症状を伴う病気の継発症として起こることが多いので、体質や他の病気が関連することがあります。