全身疾患としての犬の目の病気の症状と原因、治療について|獣医師が解説 NEW
眼科 症例紹介全身疾患としての犬の目の病気の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
犬の目の異常は、「目だけの病気」とは限りません。
実際の診療では、目の症状をきっかけに糖尿病や高血圧、自己免疫疾患、感染症などの全身疾患が見つかることは少なくありません。
「目が白い」「赤い」「見えていない気がする」といった変化の背景に、全身の病気が隠れていることがあります。
今回は、全身疾患の一症状として現れる犬の目の病気について、症状・原因・治療を獣医師の視点からわかりやすく解説します。
犬の目の異常は“全身の異常”のサインであることがある
犬の目は、血管・神経・免疫の影響を非常に受けやすい器官です。
そのため、全身の病気があると、目に比較的早く異常が現れることがあります。
特に注意したいのは、次のような変化です。
• 急に目が白くなった
• 目が赤い
• 黒目が白く濁る
• まぶしそうにする
• 物にぶつかる
• 瞳孔の大きさが左右で違う
• 目やにが急に増えた
• 見えていないように見える
これらは単なる結膜炎ではなく、全身疾患のサインである可能性があります。
糖尿病
犬では糖尿病が進行すると、高率に白内障を引き起こします。
「急に目が白くなった」と来院する犬では、糖尿病性白内障が非常に多く見られます。
糖尿病では高血糖により水晶体内にソルビトールが蓄積し、水分バランスが崩れて急速に白内障が進行します。
数日から数週間で急激に視力を失うことも珍しくありません。
初期には多飲多尿、体重減少、食欲変化がみられ、目の異常はその延長線上に現れます。
治療は血糖コントロールが基本です。
ただし、いったん成熟した白内障は内科治療で元には戻らないため、視力回復には白内障手術が必要になる場合があります。
免疫介在性疾患
免疫異常により、目そのものが炎症の標的になることがあります。
代表的なのがぶどう膜炎です。
ぶどう膜炎は、目の中の強い炎症で、
• 目が赤い
• まぶしそう
• 涙が多い
• 瞳孔が縮む
• 目が白く濁る
といった症状を示します。
原因としては、自己免疫疾患、感染症、腫瘍関連、全身性炎症などがあります。
ぶどう膜炎は「目の炎症」と見えても、実際には全身の免疫異常の一部であることが少なくありません。
治療はステロイドや免疫調整薬、原因疾患への対応が中心になります。
感染症
全身性感染症でも目に異常が出ることがあります。
代表的なのは、
• 犬ジステンパー
• レプトスピラ
• 全身性真菌感染
• ダニ媒介性感染症
などです。
感染症では、結膜炎、ぶどう膜炎、網膜炎、視神経炎など多彩な眼症状がみられます。
単なる「目やに」や「赤目」に見えても、発熱や元気消失を伴う場合は全身感染症を疑う必要があります。
治療は感染源に応じた抗菌薬、抗真菌薬、支持療法が中心です。
腫瘍性疾患
全身性腫瘍、特にリンパ腫では目に異常が出ることがあります。
眼内出血、ぶどう膜炎、網膜病変、眼球突出などがみられることがあり、眼症状が最初の発見契機になることもあります。
高齢犬で「治りにくい目の炎症」がある場合、単純な眼病だけでなく腫瘍性疾患も考慮が必要です。
治療は原発腫瘍の診断と全身治療が中心になります。
神経疾患
目は神経疾患の影響も強く受けます。
• 瞳孔不同
• 対光反射異常
• 瞬き異常
• 視覚障害
• 眼振
これらは脳疾患、前庭疾患、視神経疾患のサインであることがあります。
目の異常に見えて、実際には神経疾患が本体であるケースは少なくありません。
治療は神経学的評価と原因疾患への対応が必要です。
診断で重要なこと
犬の目の異常では、「目だけ診る」では不十分です。
本当に重要なのは、目の異常を全身の病気として捉える視点です。
診断では、
• 眼科検査
• 眼圧測定
• フルオレセイン染色
などの目の検査だけでなく、
• 食事などの飼育管理状況の聴取
• 血液検査
• 超音波検査
• 神経学的評価
を組み合わせて、全身とのつながりを評価します。
治療の考え方
全身疾患に伴う眼症状では、点眼だけで解決しないことがほとんどです。
目薬はあくまで局所治療であり、根本的には
• 飼育方法の調整
• 感染を抑える
• 免疫を調整する
• 腫瘍を治療する
といった全身治療が必要です。
眼症状は「目の病気」ではなく、「全身疾患の見えるサイン」と考えることが重要です。
まとめ
犬の目の異常は、目だけの問題ではなく、全身疾患の入り口であることがあります。
特に、
• 急な白濁
• 急な失明
• 強い充血と左右同時に生じ、繰り返す炎症
• 左右差のある瞳孔
がある場合は、単純な結膜炎で済ませず、全身評価が必要です。
犬の目は、全身状態を映す“窓”です。
目の異常をきっかけに全身を診ることが、視力だけでなく命を守る診療につながります。
フレンチブルドックやボストンテリアなどの短頭種は、全身的な体質の問題で目の病気を引き起こすことがある代表的な犬種です。この子は結膜とまぶたの腫れと充血と目の痛みだけでなく、よーく見ると瞳孔が完全に閉じてしまっている(縮瞳)症状が認められ、自分の免疫力の暴走により生じる可能性がある前部ぶどう膜炎があることが疑われました。このような子は食事管理を徹底しアレルギー物質になるべく暴露されないようにすることとステロイドホルモン薬の上手な使用が必要になってきます。
この子は目の表面が全体的に真っ白になり、角膜の損傷も認められ、角膜ジストロフィーの可能性も考えられる角膜炎の事例でした。残念ながら完全に治すことはできませんが、飼育方法の改善と目の管理によって、痛みの少ない状況を維持することもできます。
自家血清点眼薬の使用で角膜炎の治療をすることでこのように改善を認めることもあります。最近のワンちゃんは、遺伝的、体質的にこのような症状が出ることがあり、目だけでなく、食事内容を中心とした飼育管理の適正化や飼い主さんの病気の理解が大事になってきます。
