症例紹介

オス猫のおしっこ詰まりの手術(会陰尿道造瘻術)の適応について|獣医師が解説 NEW

腎泌尿器科 血液科 症例紹介

オス猫のおしっこ詰まりの手術(会陰尿道造瘻術)の適応について|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
オス猫の泌尿器トラブルの中で特に多いのが「尿道閉塞(おしっこ詰まり)」です。突然トイレに何度も行く、少量しか尿が出ない、苦しそうに鳴くなどの症状が見られ、放置すると命に関わる危険な状態になります。
多くの場合はカテーテルによる尿道閉塞の解除で回復しますが、再発を繰り返す猫では外科手術である**会陰尿道造瘻術(えいんにょうどうぞうろうじゅつ)**が検討されることがあります。
この記事では、獣医師の立場から「どのような場合にこの手術が適応になるのか」をわかりやすく解説します。

オス猫に尿道閉塞が多い理由

猫の尿道はオスとメスで構造が大きく異なります。
オス猫の尿道は途中で急激に細くなる部分があり、さらに陰茎部分では直径が非常に細くなっています。そのため、以下のようなものが詰まりやすくなります。
・尿中の結晶(ストルバイトなど)
・炎症による粘液
・血液や細胞の塊(尿道プラグ)
これらが尿道に詰まると、膀胱に尿が溜まり続けて排尿できなくなります。
数日以内に治療しなければ、腎不全や高カリウム血症によって命に関わる状態になることもあります。

基本的な治療はカテーテル治療

初めて尿道閉塞を起こした猫では、通常は以下の治療を行います。
鎮静または麻酔下で尿道カテーテルを挿入し、詰まりを解除します。
その後、膀胱洗浄を行い数日間カテーテルを留置します。
同時に
・点滴治療
・膀胱炎の治療
・食事療法
・再発予防の内科管理
を行うことで、多くの猫は回復します。
しかし問題は再発するケースです。

会陰尿道造瘻術とはどんな手術か

会陰尿道造瘻術(Perineal urethrostomy:PU手術)は、オス猫の尿道の細い部分を取り除き、より太い尿道を会陰部に開口させる手術です。
簡単に言うと
「詰まりやすい細い尿道を避けて、太い尿道から排尿できるようにする手術」
です。
この手術を行うことで、尿道閉塞のリスクを大きく減らすことができます。

手術が検討される主な適応

会陰尿道造瘻術は、すべての尿道閉塞の猫に行う手術ではありません。主に次のような場合に検討されます。
尿道閉塞を何度も繰り返す猫
最も多い適応がこれです。
カテーテル治療を行っても短期間で再閉塞する猫では、飼い主と猫の双方にとって大きな負担になります。
一般的には
・短期間で複数回の閉塞
・内科管理をしても再発する
このような場合に手術を検討します。
●尿道が損傷している場合
カテーテル処置が何度も必要になったり、強い炎症が起こると、尿道が狭くなってしまうことがあります。
このような尿道狭窄が起こると、通常の排尿が困難になるため、手術が必要になることがあります。
●尿道結石が詰まっている場合
膀胱結石が尿道に移動して完全に詰まってしまうことがあります。
カテーテルで押し戻せない場合には、外科的に対応する必要があります。
その際に会陰尿道造瘻術を行うケースもあります。
●尿道破裂などの重度の損傷
交通事故などの外傷や重度の尿道損傷がある場合、尿道の再建手術としてPU手術が選択されることがあります。

手術のメリット

会陰尿道造瘻術の最大のメリットは『尿道閉塞の再発リスクを大きく下げられることで』す。
多くの猫では、手術後に排尿トラブルが大きく減少します。
頻繁な救急受診やカテーテル処置が必要だった猫では、生活の質が改善することも多いです。

手術のデメリットと注意点

一方で、この手術にはいくつかの注意点があります。
まず、手術後は尿道口が広くなるため、細菌感染が起こりやすくなることがあります。
また、手術後の合併症として
・出血
・尿道狭窄
・皮膚炎
・尿失禁(まれ)
などが報告されています。
さらに、手術をしても膀胱炎そのものは治らないため、食事管理やストレス管理などの内科的ケアは引き続き重要です。

手術を決める前に考えること

会陰尿道造瘻術は猫にとって有効な手術ですが、すべての猫に必要なわけではありません。
判断する際には
・これまでの閉塞回数
・治療への反応
・猫の体質
・飼い主の生活環境
などを総合的に考える必要があります。
主治医とよく相談し、猫にとって最も良い選択を検討することが大切です。

まとめ

オス猫の尿道閉塞は命に関わる可能性のある重要な病気です。
多くの場合は内科治療で管理できますが、再発を繰り返す猫では会陰尿道造瘻術という外科的選択肢があります。
この手術は、適切な症例で行えば尿道閉塞のリスクを大きく減らすことができる有効な治療です。
もし猫がおしっこ詰まりを繰り返している場合は、早めに動物病院で相談し、治療方針について十分に検討することをおすすめします。


次郎丸動物病院へのご予約・お問い合わせ

【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

オス猫の会陰尿道造瘻術の手術1週間後の様子です。この子は膀胱結石によっておしっこが出なくなっていましたが、尿道の太い部分が肛門下に造瘻されたため、スムーズに排尿することができる様になりました。尿道カテーテル治療でおしっこの出方が回復しない場合や何度も尿道閉塞を繰り返す場合にこの手術は適用されます。


手術前の様子:尿道カテーテルを留置して排尿を試みていましたが、カテーテル抜去後再度尿道閉塞を繰り返していました。


手術中の様子:写真のように、普通のオス猫の尿道では通らない8Frの太さの栄養チューブが通る骨盤腔内の尿道を引き出して、会陰部に開口させる手術です。ここの尿道だとペアン鉗子が通るほどの太さがあり、ここを会陰部に開口させると、尿道閉塞が理論上起こらなくなります。