猫の貧血の症状と原因、治療について|獣医師が解説
腎泌尿器科 血液科 症例紹介猫の貧血の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
猫の貧血とは、血液中の赤血球が減少し、全身に十分な酸素を運べなくなった状態です。
貧血そのものが一つの病気というより、腎臓病や感染症、出血など、さまざまな病気によって起こる「症状」の一つです。
猫の貧血でみられる症状
貧血が軽い場合には、ほとんど症状がみられないこともあります。
貧血が進行すると、
・元気がなくなる
・食欲が低下する
・疲れやすくなる
・歯ぐきや舌が白っぽくなる
・呼吸や心拍が速くなる
・ふらつく、ぐったりする
などの症状がみられます。
赤血球が急激に壊される「溶血」が起こっている場合には、歯ぐきや白目などが黄色くなる「黄疸」がみられることもあります。重度の貧血では、呼吸困難や虚脱を起こし、命にかかわる場合があります。
猫の貧血の主な原因
猫の貧血は、大きく「出血」「赤血球の破壊」「赤血球を十分に作れない」の3つに分けて考えます。
1.出血
ケガによる出血だけでなく、消化管からの出血、腫瘍からの出血、ノミや消化管寄生虫などが原因になることがあります。
外から見えない場所で出血していることもあるため注意が必要です。
2.赤血球が壊される
赤血球が通常より早く破壊される状態を「溶血」といいます。
猫では免疫介在性溶血性貧血、ヘモプラズマ感染症、薬物や中毒などが原因となることがあります。
3.赤血球を十分に作れない
猫で比較的よくみられる原因の一つが慢性腎臓病です。
腎臓では赤血球を作るよう骨髄に働きかける「エリスロポエチン」というホルモンが作られています。腎機能が低下すると、このホルモンが不足して貧血を起こすことがあります。
そのほか、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症、慢性炎症、腫瘍、骨髄疾患などでも貧血が起こります。
貧血の検査
まず血液検査によって赤血球数やヘマトクリット値などを確認します。
さらに重要なのが、骨髄が新しい赤血球を作ろうとしているかどうかです。血液のニューメチレンブルー染色による塗沫検査で再生像があるか確認します。
骨髄が反応しているものを「再生性貧血」、十分に反応していないものを「非再生性貧血」と呼び、原因を考えるうえで重要な手がかりになります。
必要に応じて、FeLV・FIV検査、ヘモプラズマ検査、レントゲン検査、超音波検査、骨髄検査などを行います。
猫の貧血の治療
治療は貧血の原因によって大きく異なります。
出血している場合には止血や原因となる病気の治療、感染症では抗菌薬などによる治療、免疫介在性疾患では免疫抑制治療などを行います。
慢性腎臓病に伴う貧血では、状態によって造血を促す薬剤や鉄剤などを使用することがあります。
また、貧血が重度で全身への酸素供給が不足している場合には、輸血が必要になることもあります。
まとめ
猫の貧血は、慢性腎臓病や感染症、出血、免疫疾患、骨髄疾患など、さまざまな原因によって起こります。
「最近元気がない」「食欲が落ちた」「歯ぐきが白い」といった症状がみられる場合には、貧血が隠れている可能性があります。
特に歯ぐきが真っ白、呼吸が速い、立てない、ぐったりしているといった場合には重度の貧血の可能性もあるため、早めに動物病院を受診しましょう。
血液をニューメチレンブルー染色すると、できたばかりの赤血球には遺伝情報のRNAが残っており、写真のように赤血球の中に紫色のもやもやしたゴミのようなものが認められます(赤血球の再生像)。このような赤血球が多数認められる場合、血液を作る能力が保たれていることを示し「再生性貧血」(血液が壊れるか、失われたことによる貧血)と診断されます。また、少ないあるいは認められない場合「非再生性貧血」(赤血球が作られないことによる貧血)と診断されます。一般的に「非再生性貧血」の方が重症度が高いと考えられますが、貧血は全般、命に関わる可能性がある病気ですので、注意が必要です。
