犬の短頭種症候群の症状と原因、治療について|獣医師が解説
循環器科 呼吸器科 症例紹介犬の短頭種症候群の症状と原因、治療について|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
わんちゃんが調子を崩すと、飼い主さんとしてとても心配になりますよね。今回は、わんちゃんの短頭種症候群の症状と原因、当院での治療についてお話しさせていただきます。
【はじめに】
犬の中には特有の外見を持つ短頭種(パグやフレンチブルドッグやボストンテリアなど)がいますが、その特異な形態が原因で生じる「短頭種症候群」は、飼い主にとって理解が必要な健康問題となります。本記事では、獣医師の視点から犬の短頭種症候群に焦点を当て、その症状、原因、そして適切な治療法について解説します。
【犬の短頭種症候群の症状】
短頭種症候群は、特に短頭種に見られる独自の症状が現れます。これらの症状を理解することは、適切なケアと早期の対応につながります。
1. 呼吸困難: 短頭種は通常、短く平らな顔を持っており、呼吸に支障が生じやすいため、呼吸困難が現れることがあります。
2. 運動能力の低下: 短い鼻や頭部構造のため、通常の犬よりも運動能力が制限されることがあります。
3. 眼の異常: 眼球の突出や涙目が見られることがあり、これは顔の形態からくる問題に関連しています。
4. 歯並びの問題: 顎の形状により歯並びが乱れがちであり、歯周病や口内炎のリスクが高まります。
【犬の短頭種症候群の原因】
短頭種症候群の主な原因は、繁殖において短頭種の外見が優先され、これが健康への影響をもたらすことです。
1. 遺伝的要因: 短頭種の特異な形態は遺伝子に起因しており、これが症候群を引き起こす原因となります。
2. 過度な選択育種: 美的な特徴が優先された結果、健康問題を抱えやすい犬種が生まれることがあります。
【犬の短頭種症候群の治療】
短頭種症候群の治療には、症状の程度によって異なるアプローチが取られます。
1. 肥満をさせないように配慮した生活管理: 短頭種症候群の呼吸の症状は、遺伝的形質のためです。ここで肥満をさせる飼育方法(例えば人の食べ物や犬のおやつなど、不適切な食べ物を多給すること)で肥満させてしまうと、脂肪が気道を圧迫し、さらに呼吸困難を悪化させてしまいます。加えて熱中症や肺病変が引き起こると、元に戻らないような状況になり、命の危機に陥ります。短頭種を肥満させることは非常に危険なので、注意する必要があります。その子の体質に合った、栄養バランスの取れた総合栄養食のドックフードを適正量与えることで飼育することが理想的です。
2. 定期的な健康チェック: 獣医師の定期的な診察が重要です。短頭種は、食欲旺盛な子が多く、太りやすい上、アレルギー体質や膀胱結石の体質を持っている子も非常に多い印象です。定期的に動物病院で診察を受けることで、このような短頭種特有の問題が生じているか早期に発見することができ、予防の対策につなげることができます。
3. 手術: 特に呼吸困難などの重篤な場合、手術が必要となることがあります。ただしこのような子は命懸けの対応になることが少なくありません。手術内容は、軟口蓋過長の整復や鼻翼拡張などの手術が行われることがあります。
【まとめ】
犬の短頭種症候群は短頭種に共通する健康問題であり、その症状や原因を理解することで、飼い主はより良いケアと管理を提供できます。獣医師のアドバイスを受けながら、短頭種犬との幸せで健康な生活を築くために努めましょう。当院では重症例は呼吸器専門の動物病院をご紹介することもできます。飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、お気軽にお問い合わせください。
パグの子の不妊手術の麻酔覚醒時の写真です。パグやフレンチブルドックやボストンテリアなど短頭種と呼ばれる犬の種類は、麻酔をかけることにリスクがあります。軟こう蓋と呼ばれる喉の部位が長く、喉頭を塞いでしまうことがあるため、麻酔覚醒時に気管チューブを抜管するときに気を遣って麻酔を覚醒する必要があります。この子はなるべく喉頭の動きを制限しないように、胸を下にしてゆっくり麻酔覚醒を行なっています。