症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編1|獣医師が解説

皮膚科 症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編1|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」
今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「診断編1」です。

【9.皮膚病の診断のために重要な「視診」】

前回まで、「検査編」と称して、動物の皮膚病の一般的な検査についてお話ししました。検査は診断するための武器として大切ですが、皮膚病を診断する際に、その皮膚病の見た目をどう評価するか、ということも大事になります。なぜなら、獣医師の頭の中にある仮診断が正解なのかを確認するために検査を行うため、皮膚病の見た目でどの程度獣医師がその子の皮膚病の仮診断を正確に絞り込めるかによって、診断の精度が変わってくるためです。具体的にいうと、皮膚に湿疹などの病変があるか、その病変の見た目はどのような性状か、その病変の位置はどこにあるのか、病変部位は赤く腫れているのか、動物はしきりに掻いているのかなどの皮膚病の見た目の情報からどの程度正確に仮診断を絞りこめるか。このことを理論的に評価することが皮膚病の正確な診断のために大切になってきます。

【10.かゆみがある、赤みがある=炎症性の皮膚疾患である証拠】

皮膚病が炎症性の病気か、非炎症性の病気かという観点に着目し分類することは、診断の助けになります。炎症とは、厳密にいうと体の免疫によって異物と判定される病変がそこにあることを示しており、発熱(熱をもつ)、発赤(赤みがある)、腫脹(はれている)、疼痛(いたみ、皮膚病の際はかゆみを含む)の症状が必ず発生します。つまり、かゆみがある、赤みがある、熱を持っている、腫れている病変を持つ皮膚病は炎症性の皮膚病ということになります。炎症性の皮膚病には、微生物(細菌、真菌、酵母)や寄生虫(ノミやカイセンダニなど)などの異物が関連したもの、また体の免疫系のシステムの暴走により異物があるときと同じ反応が起こってしまうもの(アレルギーや自己免疫性疾患)が代表的な皮膚病として挙げることができます。また、非炎症性の皮膚病には、甲状腺などホルモンの異常による脱毛症やアロペシアX、カラーダイリュート脱毛など、血統や体質や内分泌ホルモンの異常が引き起こす皮膚病が代表例として挙げられます。このように、かゆみがあるか、赤みがあるかということは、皮膚病を診断する上で重要な情報となります。
当院では、飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、お気軽にお問い合わせください。(つづく)


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背中の皮膚炎を主訴に来院されたワンちゃんの写真です。背中を中心に全体的にかさぶたを伴った湿疹が散在しています。


拡大してみると一つ一つの湿疹で中心部が赤くなっているところと、赤みが無くなっているところとあり、それぞれの病変で周辺部位でかさぶたを伴う病変を形成していることがわかります。このワンちゃんの皮膚病は痒みと赤みを伴っていたため、炎症性の皮膚病を伴っている可能性が示唆されます。また、湿疹があることから、最低限でも細菌という微生物が関連している可能性が示唆される所見です。このように皮膚病の見た目からもその子の皮膚病の仮診断を立てるための有用な情報を得ることができます。ちなみにこの子は副腎皮質機能亢進症を患っており、皮膚の石灰化(異物反応による炎症を起こすことがありえます)と細菌性皮膚病を合併している複雑な皮膚疾患と考えられ、細菌をやっつける抗生物質と副腎ホルモンを調節する薬を併用することで皮膚の悪化を食い止めることになりました。