症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編2|獣医師が解説

皮膚科 症例紹介

「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編2|獣医師が解説

福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」
今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「診断編2」です。

【11.いわゆる湿疹がある場合は、最低でも細菌性の皮膚原因が関与している可能性を疑う】

最近は、皮膚の病変、いわゆる湿疹という言葉は診断に導く上であまり役に立たないため、医療用語として使用されることは少なくなってきているようです。しかし、見た目の上で主に皮膚の隆起を伴ういわゆる湿疹病変は、多かれ少なかれ最低でも細菌と呼ばれる微生物の病原体がその病変の形成や悪化に一役をかっている印象です。湿疹はオーソドックスには、紅斑(こうはん)と呼ばれる隆起を伴わない赤みのある皮膚病変から、丘疹(盛り上がりのある皮膚病変)を経て水疱や膿疱を持つ湿疹に発展します。この時点で細菌がその主な原因か(一次性病因)、アレルギーなどのかゆみが生じる皮膚病を舐めたり掻いたりすることで二次的に感染を起こしたかは定かでなくても、細菌の合併した皮膚病であることが疑わしくなってきます。その後膿疱は破けてびらん(皮膚の表層が欠損した状態)や痂皮(かさぶた)や小環(しょうかん;膿が破けてかさぶた状になった病変)になり落屑(らくせつ;いわゆるふけ)が目立つようになります。つまり、カサブタやふけが目立つ皮膚病変では細菌感染の合併を頭の中に入れて診察する必要があります。このように、湿疹の成り立ちを、見た目と発生部位から理論的に考え評価することが皮膚病の診断にとって大切になります。ちなみに細菌は抗生物質で治療することで良くなりますが、皮膚表面の湿度や温度を低下させるようにする環境調整で繁殖を抑えることで治療することで副作用少なく治療することができます。詳しくは各論編でお話しします。
当院では、飼主様の希望に応じて適切に診断し治療することを大切にしていますので、お気軽にお問い合わせください。(つづく)


次郎丸動物病院へのご予約・お問い合わせ

【電話受付】 9:30〜12:30/16:00〜18:30(診察終了30分前まで) 【休診】火曜・祝日・金曜午後

前回紹介したワンちゃんの湿疹は小環(しょうかん)と呼ばれるタイプの湿疹で周辺部の病性が盛んで、中心部は治癒しかかっているような湿疹の病変です。このことからも微生物の病原体、特に細菌の繁殖が認められる可能性が高い病変です。


この皮膚の湿疹病変は、病変部の全体的な腫れ(膨隆)と火傷のような湿った膿を伴う湿疹と発赤を伴う湿疹です。夏の高温多湿の環境下で、水に濡れる行為(例えば水浴びをした、シャンプーをして十分に乾かさなかったなど)があった後数日後に生じる浅在性膿皮症に特徴的な湿疹で、通称ホットスポットと呼ばれることもあります。膿皮症は細菌性皮膚病の総称です。細菌繁殖を抑える治療(抗生物質の投与、毛を刈って空気に触れさせる)を行うことで治療します。