「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編5|獣医師が解説
皮膚科 症例紹介「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」診断編5|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「診断編5」です。
【14.外耳道炎の存在】
犬で左右の耳の炎症が認められる際、この時もアレルギーなどの体質と、温度湿度が関係した微生物の病原体(細菌、真菌、マラセチア、ミミヒゼンダニ)の影響を念頭に置く必要があります。動物の耳は鼓膜までL字に曲がった外耳道を有する上、耳たぶが大きく耳道をを塞ぎやすく、換気が悪くなる傾向があります。また、アレルギー性の皮膚疾患は、外耳道の炎症を合併させることが多いのです。
このため、前回お話しした皮膚病の悪化原因である①アレルギーの関与②温度湿度の関与の影響を、外耳道炎が認められたときは考慮する必要があります。よって、耳の皮膚の病気ではあるのですが、食べ物を中心とした食餌の再検討(まずは総合栄養食のドックフードのみで飼育することから始めます)が必要になることが多いです。
また、当院ではご自宅での外耳道のケアや治療を推奨していません。必ず動物病院で外耳道の洗浄と外用薬の塗布をおこなっていただくようにしています。これは、外耳道が重度に腫れ上がり、耳の穴が塞がってしまった場合、外耳道炎は難治性となり治療が困難になります。自宅で治療を行なっていると、難治性の外耳道炎になっていることを見逃してしまい、治らない状態になってしまい、手術を検討しなければいけない事例に遭遇します。こうなる前であれば、週1回の通院治療で外耳道炎は大抵の場合改善します。これが自宅での外耳炎の治療を推奨しない理由です。
写真のように外耳道が腫れ上がってしまうと、耳道内の換気が悪化し、温度と湿度が高い状態が維持され、おまけに嫌気性環境(酸素や空気に触れにくい状態)になります。嫌気性環境ではある種の細菌が繁殖しやすくなるため、細菌感染が起こるとその増殖をコントロールできなくなるため、外耳道炎が治りにくくなります。こうなる前に動物病院で適切に耳道の洗浄と食餌の適正化を行う必要があります。また、耳道内の嫌気性環境を改善するために、垂直耳道切除術などの耳に対する外科手術が行われることがあります。
この写真は他の犬で行った垂直耳道切除術の写真です。耳道の換気を改善する目的で行われました。外耳道炎の症状は軽減しますが、大抵の場合で手術後も定期的な耳道洗浄を行う必要があることが多いようです。