「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編1|細菌が関連する皮膚病:膿皮症|獣医師が解説
皮膚科 症例紹介「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編1|細菌が関連する皮膚病:膿皮症|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編1」です。
【16.細菌が関連する皮膚病:細菌性皮膚炎(膿皮症)】
原因
細菌が関係する皮膚病には古典的には表層性や浅在性の細菌性皮膚病や深在性の細菌性皮膚病があります。どちらも膿皮症というような呼び方をすることがあります。Staphylococcus pseudintermediusという菌が原因となることが多いですが、他の細菌が原因となることもあります。
症状
表層性や浅在性の細菌性皮膚病は毛包炎と呼ばれる、いわゆる毛穴の中に細菌が繁殖することで生じることが多く、いわゆる湿疹の形成としてやホットスポットと呼ばれる円形のただれた皮膚炎の形成として皮膚症状が認められることがあります。全身性にも局所性にも存在する病変が認められます。細菌は普通に皮膚に存在するため、高温度と高湿度といった条件が揃うことで皮膚病変が発症することが多い印象があります。つまり、夏や梅雨や冬の暖房のつけ始めといった季節が関与したり、濡れたりするエピソード(シャンプーして十分に乾かさなかった、執拗に舐める行為をしていた、手先を毎日濡れたタオルで拭いていた)に引き続いて皮膚病を発症していたりします。深在性の細菌性皮膚炎は、びらんと呼ばれる皮膚が一枚剥がれたような皮膚病変があり、細菌だけでなくその動物の体質も関与している可能性があり、治りにくい印象があります。
治療
難治性の細菌性皮膚病は、感受性検査を行い、効果のある抗生物質を特定する必要がありますが、通常、細菌性皮膚病は細菌をやっつけることができる抗生物質という治療薬を最低でも3週間投与して治療を行います。細菌性皮膚炎は、細菌だけが関与しているものが多いですが、アレルギーなどの他の皮膚病と合併していることが多い印象があります。
これは柴犬の右の脇にできた細菌性皮膚炎です。火傷のようにただれ、分泌物と赤みとかゆみを伴った病変で通称「ホットスポット」とも呼ばれる病態です。レトリバー系やスパニエル系の犬の皮膚にもできやすく、夏場ぬらしたエピソード(海に行った、シャンプーしたなど)の後1週間ぐらいで発症します。この子の場合、アレルギー性皮膚病と思われる脇の痒みのためによくなめていたことが影響し、高温度、高湿度の状況が局所的に発生したために発症したと考えられます。細菌は皮膚に普通にいるために高温度高湿度環境がそろうと急速に繁殖するので、本事例のような皮膚病が生じてしまいます。よって、治療は高温度高湿度の環境を取り払うこと(病変部の毛をかって空気に触れやすくする)と細菌の数を減らすこと(抗生物質の使用)を行います。