「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編2|獣医師が解説
皮膚科 症例紹介「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編2|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編2」です。
【17.アレルギーが関連する皮膚病:アトピー性皮膚炎、食物アレルギーによる皮膚炎】
原因
アレルギー性皮膚炎は、ある物質に対して体が過剰に反応してしまうために生じてくる皮膚炎です。その物質が環境の物質で、接触や吸引によって生じてくるものを狭義ではアトピー性皮膚炎に分類され、食べ物によって生じている場合は食物アレルギーと分類することになります。狭義と言ったのは、アトピーは皮膚のコンディションや保湿性など栄養や体質も一緒に関連し、一概に接触や吸引する物質だけの原因とは言い切れない場合が多いことや、食事とアトピーの両者が合併している事例も多くあるため、厳密な意味でアトピー性皮膚炎というともう少し広い範囲の皮膚病を含むことになるためです。
診断
アレルギー性皮膚炎の原因となる物質には様々なものがあり、接触物質ではイエダニの死骸などを含むホコリ(いわゆるハウスダスト)や特定の花粉、食べ物では小麦や牛の成分を含むものなどが代表ですが、それ以外のものもあります。
アレルギーが関連する皮膚病はおそらく動物の皮膚病の中で一番多く、なおかつ治療が困難で、生涯一定の治療が必要となることが多いものです。犬や猫の純血種特有の皮膚アレルギーの体質の血統もあり、シーズーやコッカースパニエル、フレンチブルドックなどの短頭種やアビシニアンなどの血統ではアレルギーの関与する皮膚炎が起こりやすい印象があります。
アレルギー物質を特定するにはIgE抗体を測定する血液検査やパッチテストなどを行いますが、結局は皮膚のコンディションの正常化と食物でのアレルギー物質摂取を避ける目的で、食餌の適正化を行う必要があり、なおかつ食餌の適正化で症状が軽減する事例が多いため、当院では治療が困難な事例においてこれらのアレルギーの検査を行うことになります。
治療
よってアレルギーが関連する皮膚病が疑われた場合、まず総合栄養食のフードと水で飼育し、おやつなどの栄養バランスを崩し、アレルギー物質となる可能性のある食べ物を一切与えないようにすることが治療の始まりとなります。人の蕎麦アレルギーと同様に、少しでもアレルギー物質を含むと反応が生じてしまう可能性があるため、食事管理は厳密に行う必要があります。時々低アレルギーフードに切り替えて、おやつを与えている方がいますが、この飼養管理では食べ物のアレルギー物質を排除できないため、せっかくの高価なフードを与えることが水の泡となってしまいます。低アレルギーフードの効果を十分に出すには、そのフードとお水だけで飼育する必要があります。
また、食事治療だけではかゆみをコントロールできない場合、必要に応じて内服薬や外用薬で免疫抑制剤でアレルギー反応を抑える治療を行います。近年はオクラシチニブに代表される抗アレルギー薬など、アレルギー性皮膚炎に対する痒みを抑える薬も利用されます。
アレルギーが関与する皮膚炎は治療への反応を評価しつつ、その子その子でオーダーメードの治療方法で治療を行い、なるべく正常の状態で皮膚の状態を維持することが治療のゴールとなります。
この柴犬はアレルギー性皮膚病と細菌性皮膚病が重なった皮膚炎を起こしています。アレルギーが関係した皮膚病では、眼や口や肛門などの粘膜と皮膚の移行部の病変、左右対称の外耳道炎、脇の下や内股の皮膚病変、趾端皮膚炎など、体の場所に特徴的な皮膚炎が生じることが多いです。この子は最初に診察した時から、アレルギーの関与が疑われましたが、ある一定の治療条件の制限があったため、当院で非常に特徴的で、革新的な事例でした。治りにくい皮膚病の犬猫にとって非常に有意義な情報ですので、次回の記事で詳しく説明します。