「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編3|獣医師が解説
皮膚科 症例紹介「動物の皮膚病をどうやって治療するの?」各論編3|獣医師が解説
福岡市早良区、福岡市西区、福岡市城南区、福岡市中央区、糸島市のみなさん、こんにちは。
福岡市早良区の次郎丸動物病院の獣医師の矢野です。
「獣医師は動物の皮膚病をどうやって治療するの?」今回は、当院で治療を得意としている皮膚病について、動物を飼育する皆さんが素朴に抱くこの疑問について解説しようと思います。「概要編」「検査編」「診断編」「各論」という形でシリーズとして述べさせていただきます。今回は「各論編3」です。
【18.アレルギー性皮膚炎番外編:総合栄養食だけで飼育することの重要性】
前回のブログで、アレルギー性の皮膚炎と細菌性皮膚炎が合併した病変と仮診断にいたった柴犬の事例の続きのお話をします。結論を申し上げると、私はこの事例で、総合栄養食だけで飼育することの重要性を強く感じるにいたりました。ジャーキーなどの犬のおやつ類を与える弊害を非常に強く感じました。
この事例は、実は飼い主さんがかなりのご年配の女性でした。そのため、治療について通常は十分に説明して開始するのですが、それが難しい状況でした。本来であれば、皮膚の仮診断についてお話しし、皮膚の検査を提案後、その検査結果で診断的治療を開始し、治療の反応を見て皮膚病の治療が続きます。しかし、それが難しいこと、抗生物質の投薬やアレルギー薬の投薬が難しい状況でした。よって、単純で明快な治療方法を提案し、やっていただくしかないなと判断しました。
この年配の飼い主さんは、診察室でもジャーキーを与えるような飼育方法をしていましたので、少なくともこれをやめていただく必要があったこと、また、強い外耳道炎がありましたので、週に1回の外耳道洗浄治療が必要ではありました。
そこで
①今食べている総合栄養食のドックフードとお水だけで飼育してください。
②週に1回、外耳道の洗浄治療に来てください。
という2つのことだけお願いしました。その9週間後のこの子の写真が次の写真です。
ご覧の通り、皮膚疾患のあった目の周囲の病変、脇やお腹の病変、外耳道炎がほぼ正常の状態まで回復しました。私はこの体験で、非常に驚きました。アレルギー性の皮膚病の関与が疑われる事例では、
低アレルギーのドックフードを使うことより、
皮膚病の治療薬を使うことより、
シャンプー治療をすることより、
高額のアレルギー検査をすることより、
単純に総合栄養食のドックフードとお水のみで飼育し、犬のおやつを一切与えないようにすることが一番大切だということがわかりました。
この事例から皮膚病で悩んでいる動物に対してまず一番に行うことは、サプリを試したり、薬を試したりする前に行うことは、ドックフードだけで飼うことであることを、この事例から学ばしていただきました。
ちなみにこの事例のわんちゃんはこの後良くなったり悪くなったりを繰り返しました。というのは飼い主さんが皮膚病が良くなった後に、またジャーキーを与え始めてしまうことがあったからです。このこともこの子がアレルギー性皮膚病(特に食事性アレルギー)であった証拠です。アレルギーの体質自体は治りませんが、その子に合う飼育方法を続けてゆけば、症状が出ない状態(寛解と言います)をキープすることができます。よって、この子は総合栄養食のドックフードとお水だけで飼育すれば皮膚病は比較的良い状態でキープすることができました。
前回の記事がこちらになります。皆様の参考になれば幸いです。